進路を野球に…両親反対も「僕の心は動かなかった」

　プロのテストを受けることになったとはいっても、実際に入団できるとは自分でも思ってはいませんでした。そこで、夏休みには正式に野球部を退部し、稲垣監督に紹介してもらった社会人チームのセレクションも受けることにしました。こうして、僕は卒業後の進路を野球一本に絞っていったのです。

　僕の選択に、もちろん両親は大反対でした。無理もありません。大学に入る時に先生を職業に選び、入学後も先生になるために勉強を続けてきた。その目標の成就が目前に迫ったところで、その目標を捨ててしまおうというのですから。もちろん、その段階では両親も僕がプロに入れるなどとは思ってもいません。そこで、社会人チームに入った場合を想定して僕の翻意を促します。

「お前の体では長く続かない。それなら、最初から先生になるほうがずっといい」

「野球を辞めてからどうするのか。それから先生になるというのは、非現実的で甘過ぎる」

　と、毎日のように家族会議を開き、コンコンと僕を諭します。

　六大学を目指した大学入学前と同じような状況ですが、就職が迫っているだけに、言葉の調子も、その時よりはずっと鋭くなっています。

　でも、今度は僕の心は動かなかった。両親には申し訳なく思ったけれど、それ以上に野球への愛着が強かった。もちろん僕の選択の結果がどう出るかはわかりません。でも、最悪の結果に終わっても僕はかまわないと思ったのです。チャレンジしてダメなら納得できる。でも、チャレンジしないことには納得のしようがない。そんな中途半端な状態で生きていくのに我慢がならなかったのです。

　目標を決めたら、そのことに全力でトライする。そうすれば、結果はどうあれ自分に納得することができるハズだ。――この人生に対する考えは、今も変わっていません。

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