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栗山英樹に両親が説教「非現実的で甘過ぎる」ジョークだった「プロ絶賛」発言を本気に…国立大の学生が“まさかのプロ入り”を果たすまで 

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栗山英樹

栗山英樹Hideki Kuriyama

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posted2023/06/25 11:06

栗山英樹に両親が説教「非現実的で甘過ぎる」ジョークだった「プロ絶賛」発言を本気に…国立大の学生が“まさかのプロ入り”を果たすまで<Number Web> photograph by JIJI PRESS

WBCで侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹監督

ジョークだった“プロの絶賛”を鵜呑みに…

 スコアは忘れましたが、とにかく派手な打ち合いで、大接戦の末幕を閉じました。そしてゲーム終了後、ある部員の提案で、佐々木さんにゲームの批評をお願いしてもらうことにしたのです。

 厚かましい申し出に、佐々木さんは快く応じてくれ、いろいろ貴重なアドバイスをしてくれました。そして、最後に、僕を指さしてこういってくれたのです。

「キミならプロ野球でやっても面白いかもしれないネ」

 その時の僕の気持ちを何といえばいいのでしょう。プロ野球の一流の選手をずっと見続けている人に、やれるかもしれないといわれたのだから、それこそ天にも昇るような嬉しさでした。中学時代、同じようなことを大下さん(編注:対戦相手の監督だった元プロ野球選手・大下弘)にいわれたことがありますが、その時とは年齢が違う。現実味という点での重みが全く違います。佐々木さんの一言に狂喜した僕は、夢見心地でキャンプ地の袋井へと帰っていったのです。

 もっとも、後で佐々木さんに聞くと、あの時のホメ言葉は、一種の社交辞令。軽いジョークのつもりだったそうです。頭の片隅で、まだ野球を続けたいと思っていたからでしょう。僕はそのジョークを真面目に受け止め、そして、相手が受け入れてくれるかどうかは別として、もう一度野球にチャレンジしようと心に決めたのです。

 合宿から帰ると、僕は高校時代に面倒をみてもらった稲垣監督のところに相談に行きました。野球キャリアが豊富で、プロ野球やノンプロでも知り合いが多い。進路を決めるうえでも適切なアドバイスをしてもらえると思ったのです。そして、その稲垣監督に同行してもらって、僕は佐々木さんを訪ね、今度は自分からプロ入りについての相談に乗ってもらったのです。

 そうして、佐々木さんの紹介で、僕はプロのテストを受けさせてもらえることになりました。佐々木さんにすれば、ずい分迷惑な話だったに違いありません。

【次ページ】 進路を野球に…両親反対も「僕の心は動かなかった」

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