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〈森保ジャパンのキーマン〉新コーチ・名波浩のサッカー哲学の原点とは「ロッカールームで泣いている選手もいた」ジュビロ磐田が誇った史上最強時代の秘密
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byJIJI PRESS
posted2023/06/16 11:03
森保監督の右腕となる名波コーチ(右)
美しく散ることをよしとしない
ドゥンガが来るまでの磐田はキーゲームをことごとく落とす苦い経験を味わっている。いい選手はいるのに、いいサッカーをしているのに勝てない。そう言われ続けてきた。そんな磐田に勝者の精神が脈打ちはじめ、黄金時代の幕が上がったわけだ。
ただ、強力なライバルがいた。鹿島である。その存在が史上最強チームを産み落とす動力源でもあった。名波が言う。
「2001年も年間勝ち点は1位。でも、チャンピオンシップで鹿島に負けた。その悔しさが2002年につながったのは間違いない。どうしたら鹿島に勝てるか。その思いが自分たちを強くしたと思う」
必要なら泥臭く勝つこともいとわない。美しく散ることをよしとしなかった。それが華麗優美な強者を偉大な勝者に仕立て上げた理由なのかもしれない。そして、林や二川をはじめ、多くのサッカー仲間たちが「一緒にプレーしてみたかった」と声をそろえる魅力にあふれていた。名波にとっては仲間たちの声こそ大きな勲章だ。
「同業者から認められたことが何よりもうれしい。史上最強かどうかはわからないけれど、最高のチームだった。そう言って、胸を張りたいと思う」
名波浩(ななみ・ひろし)
1972年11月28日、静岡県生まれ。清水商高、順大を経て'95年に磐田へ。3度のリーグ優勝に貢献しベストイレブン4回。代表では長く10番を背負い、通算67試合9得点。'08年の引退後、磐田の監督を6シーズン務めた。現在は解説者。
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