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豪快タックルでSANADAをKO、いきなりIWGP挑戦…辻陽太(29歳)とは何者なのか?「オレが新日本プロレスを面白くしてやるよ」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/05/25 17:02
5月3日、福岡国際センター。IWGP世界ヘビー級王者SANADAをスピアー・タックルでKOした辻陽太は胸を2度叩くと、不敵な笑みを浮かべた
内藤はその時、まるで現在を予見するように辻をこんな風に評したが、敗れた当人は食らいつくような眼で言った。
「チャンスが舞い込んできた。目の前のチャンスを生かせるか生かせないか、そこで今後のオレのレスラー人生も変わってくるだろう。ただの壮行試合じゃない。オレにとっちゃ、とんでもない人生の大一番だった。憧れである内藤さんと試合ができて良かった? いや違う。 オレはそんなこと思ってない。せっかく憧れる相手と戦えるチャンスが来たのに、結果を残せなかった自分が悔しい。内藤さん、あんたが言うように『壮行試合の相手がオレで良かった』と思える試合だったかどうかは知らないが、近い将来、気付いた時にあんたは必ず、『内藤哲也が辻陽太の壮行試合の相手で良かった』と思っているはずだ」
辻はそうきっぱりと言った。
「今日でオレは新日本プロレス、ヤングライオンという船を降りる。この船は頑丈だった。どんなことがあろうとも耐えてくれる立派な船だ。ただ、進みが遅いんだ。これからオレ、辻陽太はオレ自身の船で旅に出ようと思う。そして、どんな荒波も乗り越えて、世界を手にするレスラーになって帰ってくる」
メキシコでは「Yota」として活動…辻陽太の経歴とは?
日体大から一度社会人を経てアニマル浜口ジム。そんなルートをたどって、辻は2017年4月に新日本プロレスに入り、1年後の2018年4月にデビューした。
辻への期待度は見てとれた。2021年6月には辻のためにシングル5番勝負も組まれた。対戦相手は棚橋弘至、タイチ、オカダ・カズチカ、ザック・セイバーJr.、グレート-O-カーンという顔ぶれだった。
3年4カ月でヤングライオンというポジションに終止符を打った辻は、2021年9月から英国RPW、11月にメキシコCMLLに移り、Yotaとしてアレナメヒコやアレナコリセオなどでルードとして悪役街道を進んでいた。戦場の変化が辻を変えていった。
最初はメキシコという国そのものに、憧れを抱いていた。だが、実際にメキシコの地を踏むと「ここでトップに立ちたい」という野望が出てきたという。