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「子どもが風邪をひいたらどうするの?」元Jリーガーが語る、中国での育成の難しさ…オシムチルドレンはなぜ中国でサッカーを教えるのか?
text by
島沢優子Yuko Shimazawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2023/05/24 11:25
2003年中京大卒業後、ジェフに加入した楽山孝志。3年半、イビチャ・オシムの指導を受けた。現役引退後、中国で育成指導者になった
「こいつ面白いなと思われたかも知れない(笑)。オシムさんからホワイドボードではなくトレーニングを通じて戦術的なことを落とし込む方法を、もっと学びたいと思ったんです。あと、とにかくね、試合も練習もオシムさんのサッカーは純粋に楽しいんですよ」
中国でもオシムの指導スキルを生かしている。
まず、選手に自分の考えを押し付けない。トライしたことを認める。それがミスであったとしてもトライしたことを褒め、すぐに答えを教えない。サッカーと判断の基準は指導するが、プレーの選択は自由だ。選手に「いろんなアイデアを出してくれ」と言ってやらせるという。
「そのトライはいいよ。だけど、こういうのもあるのでは? みたいな言い方をします。自分で考えてやっていいよっていう余白があるから、選手としては居心地がいいと思う。勝手にオシムさんを踏襲しています」と楽山。子どもたちの主体性や自立を促す指導を意識的に実践し、他のコーチにもそこを伝えている。
少し以前の数字だが、「2017レジャー白書」によると中国のサッカー人口は世界1位。推定2616万6335人だ。12位の日本は480万5150人。6年経った現在、少子化で他競技との競争が激しい日本は減少している可能性があるが、中国はサッカー改革の浸透もあってさらに伸びそうだ。
加えて、次回2026年W杯北中米大会は出場枠が32から48に大幅増となるため、中国の24年ぶり出場の可能性は決して低くない。アジア全体の競技力も底上げされるなか、日本の良きライバルになる日はそう遠くないだろう。
オシムは「指導者にも海外組が必要だ」と話したという。世界のサッカー、他の民族や文化に精通し多様性を理解する指導者がこれからの日本には重要だ。その一役を楽山も担う。(文中敬称略)
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