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「眼前に猪木が現れた」Sareeeが日本復帰戦で537人の観客に見せつけた“驚愕の投げ合い”…勝者の橋本千紘は「東京ドームで戦いたい」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/05/22 17:02
5月16日、新宿FACE。WWEから帰還したSareee(サリー)が、日本復帰戦で橋本千紘と名勝負を繰り広げた
新宿FACEに集った537人の幸福な目撃者
橋本はSareeeの三角絞めを力で持ち上げてコーナーに運んだが、Sareeeはそれだけではブレイクしなかった。そのままロープ越しのアームバーに持っていった。さらにはショルダーを使っての猪木式の腕折り。
オールド・スタイルと現代のプロレスがいい塩梅にミックスされて、戦い方に親近感がわいた。
Sareeeがアメリカに旅立つ前、後楽園ホールで前田日明とのツーショットを撮った記憶がある。あの時は前田が大きいからSareeeがやたらと小さく見えた。「この娘がWWEに行くのか」とも思った。
WWEではNXTだった。英国に渡りNXT-UKで戦ってきた「SARRAY」だったが、団体のカラーと自身が目指すものにギャップを感じたのかもしれない。この3月にWWEを離れた。
日本の女子プロレスとジュニア・ヘビー級は一級品だ。あのメルセデス・モネでさえ、センダイガールズプロレスリング(仙女)やスターダムへのリスペクトは惜しまない。
SareeeはWWEの管理下では許されなかった戦いを、日本でやるという意思を示した。
Sareeeは「完敗」と言ったが、負けから始まった彼女の物語がこれからどんな展開を見せるのかは興味深い。
新宿FACEという歌舞伎町のビルの7Fにある小さなライブ会場は満員札止めで、立ち見までぎっしり埋まった。会場に集った537人は、とびっきりのいい試合を目撃したレアな観客になることができた。
今後、Sareeeは声のかかった既存の団体のリングに単発で上がることが予想される。木村花の追悼試合、ジャガー横田の記念試合、仙女もあるだろう。さまざまなリングへの出場を続けながら、Sareeeは強さを求めていく。
「復帰第1戦の相手に選んでくれてありがとうございます」
橋本はその感謝の気持ちを、豪快なジャーマン・スープレックスで表現した。
何度Sareeeの裏投げを食らっても、橋本はSareeeをまた大きく宙に浮かせた。
試合のハイライトは、妥協を許さない両者の投げ合いだった。