「ちなみに年数回ほど大阪での対局があるんですが、昨年の3月は対局翌日にコンサドーレがアウェーに乗り込んでセレッソ大阪と戦う試合があると知ったんです。これは味がいい！　という感じで、ヨドコウ桜スタジアムへと足を運んだんです」

　将来的に効果が出そうな手に使う将棋用語「味がいい」をこんな風に使うとは……もっと言えば、社会人が出張がてら、羽を伸ばすようなスケジュールを組むことがあるとは（笑）。

©Junsei Chida

ちょっと“ドジっ子”でも将棋に対する愛は本物

　といった感じで打ち解けてきたので、夫婦で渡部さんに聞きたかったことが1つ。タイトル戦時に宿泊したホテルでカードキーをロック解除できず部屋に入れなくなったり、大人になってもガチでコケるなどの“ドジっ子ぶり”をTwitterで披露しているんですけど――これ、ホントなんですか？

「は、はい……言い訳のしようがないですが、そうなんです」

　そう言えば今回の取材を兼ねた食事会でも、別のメニューを頼もうとした妻氏が渡部さん側にあるメニュー表を指差して「えーっと、それを取ってもらえると」と言ったところ、渡部さんが「どうぞ！」と渡したのは、すでに席に届いていたポテトのお皿。思考を先読みしたんでしょうけど、まさかナチュラルにギャグマンガみたいな展開を見るとは。芯の強さを感じさせる将棋愛の一方で、時おり“なんでこんなにユルいんだ？”というギャップを大いに味わった数時間でした。

「ちょいちょいドジっ子キャラが出たとしても（笑）、渡部さんは普及のために将棋教室も定期的に行うなど精力的ですよね。何より将棋愛があふれてますし、一歩でも強くなろうとする真摯な姿勢は、ただただリスペクトです」

　後日、編集担当さんもこんな風に話していました。渡部さんの話を聞いて――対局者に加えて聞き手の皆さんも、人間味にあふれているなとあらためて実感しました。その視点でも名人戦やABEMAトーナメントなどの対局を楽しんでもらえると、新規の観る将の方も楽しんでもらえるのかなと思います！＜構成／茂野聡士＞

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