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「え、ファイターズが北広島にくる」人口6万の市がなぜ新スタジアムの候補地に? 当て馬にされているのでは…「どこまで本気かわかりませんよ」
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/05/11 06:03
2023年から北海道日本ハムファイターズの本拠地となった「エスコンフィールドHOKKAIDO」。人口6万人の北広島市になぜ新スタジアムが建設されたのか
北広島は当て馬にされているのでは…
前沢は、杉原がこれまで出会ったことのない人物だった。役所の中にはいないタイプだった。だからだろうか、正直に言えば怖いと感じた。そして、そんな前沢の第一印象を思い浮かべると、急に不安になってきた。
もしかしたら、北広島は当て馬にされているのではないか……。
今しがた耳にした計画があまりに突飛だったこともあり、そんな疑念が湧いてきた。商業的に考えれば、プロ球団にとってホームスタジアムが大都市にあることは絶対条件のはずだった。札幌から北広島まではJR千歳線で20分ほどである。東京や大阪の感覚であれば近距離だが、地下鉄圏内で生活している札幌市民にとっては遠出にあたる。事実、札幌市民は日常の足である地下鉄に比して、JR線のことを「汽車」と呼んで区別していた。
「次長、球団側がどこまで本気なのかわかりませんよ」
前沢は北広島を新スタジアムの候補地に挙げながらも、最初から札幌ありきという結論を出しているのではないか……。
杉原は隣に座る川村に向き直った。
「次長、こんなことを言うのは何ですが……。この話、球団側がどこまで本気なのかわかりませんよ」
それは上司の身を案じてのことでもあった。
だが、川村の眼は揺るがなかった。たとえ会議中であっても冗談を忘れることのない男が真顔を崩さなかった。川村は杉原を見つめ返すと、言った。
「前沢さんはな、スタジアムのために新しい駅をつくることまで考えているようなんだ」
すぐには理解が追いつかなかった。球場専用の駅ということだろうか。つまり北広島に2つ目の駅ができる……。
もはや想像を超えていた。杉原は何とか、こう言うのがやっとだった。
「それは、無理でしょう……」
<後編へ続く>
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