濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
朝倉海の“完璧なヒザ蹴り”には伏線があった…渡米に新コーチ、RIZIN復帰までの“491日間”はどう活きたのか? 記者が目撃した「圧倒的な主人公感」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/05/09 11:01
491日ぶりのRIZIN復帰戦。強烈な膝蹴りで勝利した瞬間の朝倉海
次戦はアーチュレッタとの“バンタム級王座決定戦”に
「やっぱ朝倉兄弟がいるRIZIN、最高じゃないですか!」
マイクを握ると笑顔がこぼれる。会心の勝利だった。4月29日の大会では兄の未来も復帰戦で勝利している。インタビュースペースでは「それが一番言いたかったんです。僕らがRIZINにいると違うでしょう、と」。
次戦も決まった。この日、井上直樹に勝ったファン・アーチュレッタとのバンタム級王座決定戦。アメリカのメジャー団体・ベラトールから参戦してきた強豪だ。そんなアーチュレッタを「ぶっ飛ばします」と海。
朝倉兄弟のいない昨年の大晦日、RIZIN勢はベラトールとの5vs5対抗戦で5戦全敗を喫した。ベラトールのメンバーには、アーチュレッタもいた。
「大晦日の5連敗で、RIZINが世界的にナメられたと思う。俺がやってやる、という気持ちです」
試合前から、そう語ってもいた。インタビュースペースでもあらためて「ベラトールにRIZINがかなわないというイメージがあると思うんで、絶対に俺が倒します」と宣言している。
朝倉海から感じた、圧倒的な“主人公感”
朝倉兄弟はRIZINで大きくなった。と同時に朝倉兄弟がRIZINを大きくしたという自負もある。準備期間が充分ではない試合、望まない相手との試合も使命感、責任感でやってきたと振り返るのは未来だ。海が堀口恭司をKOした2019年のビッグ・アップセットによって、RIZINというイベント自体の勢いも増した。
アーチュレッタは、アメリカで行なわれているように「タイトルマッチだから5ラウンドでやりたい」と主張。それを聞いた海は「(3ラウンド以内に勝つ)自信がないんじゃないですか」と笑った。仮に5ラウンドになっても「僕が倒すんで関係ないですよ」とも。
もちろんアーチュレッタは世界レベルの強敵だから油断はできない。むしろ正念場と言ってもいい。そういう試合に向けても、海は笑ってコメントできる。勝てば、自分がいなかった大晦日の5連敗さえ“朝倉海のためのストーリー”にしてしまうかもしれない。
この日の朝倉海から感じたのは、圧倒的な“主人公感”だ。トップファイターの戦線復帰というだけではなく主人公の帰還。負けることもあるが、必ず強くなって戻ってくる。それが主人公というものだ。
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