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朝倉海の“完璧なヒザ蹴り”には伏線があった…渡米に新コーチ、RIZIN復帰までの“491日間”はどう活きたのか? 記者が目撃した「圧倒的な主人公感」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2023/05/09 11:01

朝倉海の“完璧なヒザ蹴り”には伏線があった…渡米に新コーチ、RIZIN復帰までの“491日間”はどう活きたのか? 記者が目撃した「圧倒的な主人公感」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

491日ぶりのRIZIN復帰戦。強烈な膝蹴りで勝利した瞬間の朝倉海

2ラウンドの“ラッシュ”も練習の成果だった

 元谷は打撃で渡り合いながら組み付いていく。「全局面で勝負する作戦でした」とは試合後のコメント。海が後手に回っているように見える時間帯もあった。

 ただそういう中でも、海は落ち着いていたという。テイクダウンを防ぎつつ、元谷の足にヒザ蹴り。グラウンドに持ち込まれる場面もあったが、すぐに立ち上がった。強烈な打撃を武器とする海に対しては、どの選手も組み技に活路を求める。海としては組み負けないことがストライカーとしての生命線にもなる。

 そして離れた瞬間から大攻勢。2ラウンド、組み合った状態から元谷を突き放すと一気にラッシュをかけた。右アッパーからスッとかがみ込んで左ボディ。続けざまに右ストレートを横殴りに2発打ち込んで元谷にヒザをつかせる。

 自分のポジション、打つ位置を変えながらのコンビネーション。「ミット打ちでもやってましたね」と指摘したのは中継解説の川尻達也。エリーとの練習の成果が試合で出たのだ。当たり前のように思えるかもしれないが「練習してきたことをリングで出す」のはそう簡単なことではない。勝っても負けても、多くの選手が「やってきたことが出せなかった」と言う。しかし朝倉海にはそれができるのだ。

“完璧なヒザ蹴り”の裏にあった伏線

 そして3ラウンド、決着の時がくる。コーナーで打撃をまとめ、最後はボディへのヒザ蹴り。反撃しようと右ストレートを打った元谷の体が伸び切り、ボディががら空きになったところへ突き刺した。完璧な一撃と言うしかない。

 相手をコーナーに詰めながら、一瞬、距離をあけてもいた。カウンターをもらわないためでもあるだろうし、そのスペースに元谷を誘っていたのかもしれない。元谷がパンチを打った場所に海はいなかった。次の瞬間、ヒザ蹴りが決まった。

 フィニッシュに至る伏線もあった。組み付かれ、スタンドでバックを取られたが海は体勢を変えて正対。ロープに押し込んでヒザ蹴りを当てる。思わず後退する元谷の腹を「効いたでしょ」と指差す海。最後の一発は「当たる」という確信を持って放ったそうだ。組み負けなかったから打撃で倒せた。MMAらしい勝ち方であり、朝倉海らしい勝ち方でもあった。

【次ページ】 朝倉海から感じた、圧倒的な“主人公感”

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