その3ラウンドでも、想定外のことが起こった。「1～2ラウンドは斎藤が優勢」だと感じたので、最終ラウンドは相手が積極的に攻めてくると想像したが、平本は「待ち」の姿勢を貫いた。上田は「それも良かった」と思い返す。

「おかげで3ラウンドも斎藤君のペースでいけた。もっというと、1ラウンドに初めてタックルに行った時点で、僕の目には平本選手がイヤそうに見えた。あそこで向こうが殴ってくれば、また違っていたかなと思うけど。（全体を通して）こっちは冷静に試合を進められたと思いますね」

斎藤裕が試合後に語った「次は1年後で」の真意とは？

　試合後のインタビュールーム。次戦について聞かれると、斎藤は「できれば1年後で」とけむに巻いたが、大きなケガを負うことはなかったようだ。上田も「次、どうする？」と聞いたが、「うーん、考えます」と明確な答えは得られなかった。

「やるなら、いつでも僕らはサポートするので、ゆっくり考えて」

　斎藤が平本に勝利した一方で、メインでは朝倉未来が牛久絢太郎を撃破した。6月の札幌大会で、王者クレベル・コイケはMMAとキックを併せて7連勝中の二刀流・鈴木千裕の挑戦を受ける。RIZINフェザー級戦線は以前にも増して群雄割拠と呼ぶに相応しい階級になってきたが、斎藤の次のターゲットはなかなか定まらないようだ。そんな斎藤のさまよえる心境を上田は代弁した。

「闘いたいと思う相手がいないと、モチベーションを高めるのも大変なんじゃないですかね。王者にもなったし、次といってもなかなか見つけづらいんだと思う」

　RIZINの試合で斎藤は眼窩底骨折を疑われるほど目を腫らし、鼻も折ったことで、長期欠場を余儀なくされた。もう一度羽ばたくためには、いましばらく時間が必要なのかもしれない。

　決戦翌日、上田は前日の疲れも見せず、パンクラス立川大会のオープニングファイトに出場するパラエストラ東京の選手のセコンドについた。

　闘う者も、それを支える者も。愛がなければ、できる仕事ではない。

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