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群雄割拠のRIZINで輝く斎藤裕の“普通”という個性…セコンド上田将勝が語る勝因と“平本蓮への本音”「強かったし、格闘技に真剣」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/05/02 17:14
4月29日、『RIZIN LANDMARK 5』で平本蓮に判定勝ちを収めた斎藤裕。試合翌日、セコンドの上田将勝に話を聞いた
斎藤裕セコンドが語る平本蓮「素晴らしい選手だなと」
現役時代の上田は2012年1月に修斗で堀口恭司と対戦。のちに日本格闘技界の屋台骨を背負う男に、日本人選手として初めて土をつけた実力派として知られていた。その4カ月前にはブラジルでヒクソン・グレイシーの実弟であるホイラー・グレイシーの引退試合の相手を務め、通常より10kg以上重い契約体重というハンディの中で勝利を収めている。
その後、ONE Championshipの前身であるONEのバンタム級トーナメントで優勝するなど、海外でも活躍した。
トレーナー転身後の上田は斎藤に寄り添い、常に同じ方向を向きながら試合を迎えようとしていたが、平本戦前の気持ちはいつもと違っていた。
「前々日には2時間しか眠れなかった。大会前日は早く布団に入るようにしました」
上田が感じていた重圧は、この復帰戦を迎えるまでの斎藤が泥沼の3連敗を喫していたことと無関係ではない。数ある個人競技の中でも、格闘技ほど勝負に関して残酷なスポーツはない。勝てば天国、負ければ地獄。まさにオール・オア・ナッシング。上田は斎藤の連敗を、自分の責任として受け止めていた。
「RIZINは大会の規模もデカいし、注目度も高い。そういう試合で、自分のアドバイス次第で試合の流れが変わるわけじゃないですか。それだけでドキドキしていました」
だからといって、ヘタをしたら息子の世代にあたる平本のトラッシュトークにカッとするほど、上田も若くはない。「自分が闘う立場だったらイヤですけど……」と前置きしたうえで、平本の傍若無人なパフォーマンスに対して「格闘技を盛り上げるためにやっているのなら理解できる」と吐露した。
「だから嫌いという感情は一切なかった。実際、闘いになれば強かったし、格闘技に対する姿勢も真剣。素晴らしい選手だなと思いました」
試合になれば、想定外の出来事はつきものだ。今回もそうだった。第1ラウンド、斎藤がタックルに入ってテイクダウンを奪おうとしても、しっかりと対策してきた平本はなかなか崩れない。崩されて尻餅をつかされても即座に立ち上がり、スタンドの攻防に戻した。
上田も「腰があんなに重くて、対応してくるとは思っていなかった」と想定外の攻防だったことを認める。
「あとバックをとってきたので、ちょっとビックリしました。試合前からそう簡単にはいかないと想像していたけど、あそこまで対応してくるとは……」