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“美しい結末”を迎えた上谷沙弥と白いベルトの物語…横浜アリーナで不死鳥が蘇った日「ベルトに生かされていて、本当に幸せだった」 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2023/04/28 17:02

“美しい結末”を迎えた上谷沙弥と白いベルトの物語…横浜アリーナで不死鳥が蘇った日「ベルトに生かされていて、本当に幸せだった」<Number Web> photograph by Masashi Hara

4月23日、スターダムの横浜アリーナ大会で入場する上谷沙弥。白川未奈に敗れ、1年4カ月にわたって防衛し続けた白いベルトをついに手放した

 ここで王者としてひめかを逆指名した上谷は、「ひめかと限界のその先を体感して、一緒に超えてタイトルマッチができた」と胸を張れるほどのベストバウトでKAIRIに回答。もちろん、KAIRIとの試合を楽しみにしていた観衆も大満足させた。

「あの日」のフェニックス・スプラッシュ

 しかし上谷は、KAIRI戦の実現前にまたしても大きな悩みを抱えることになった。2022年11月3日、広島サンプラザホールで行われた白川未奈との10度目の防衛戦で、それは起きた。

 白川の鬼気迫る足攻めに苦しめられた上谷は、大技攻勢で形勢逆転。フェニックス・スプラッシュで試合を終わらせにかかった。

 しかし、攻められ続けた足が踏み切りを狂わせたか、上谷は白川の顔に足裏から落下してしまう。白川は顎と口腔部を負傷し、前歯が折れていた。不完全だったフェニックス・スプラッシュを白川はキックアウトしようとしたが、負傷を察知したバーブ佐々木レフェリーが実質的なレフェリーストップで試合を終わらせた。白川は約2カ月の欠場を余儀なくされた。

 王座戦での不完全な決着、しかも自らの技によって対戦相手が負傷・欠場となってしまったことは、上谷にとってあまりにも重いできごとだった。「もうプロレスを続ける資格がないんじゃないか」というほど思い悩んだという上谷だが、幸か不幸か、KAIRIとの次の防衛戦がたった2週間でやってきた。

 プロレスラーとして上谷にできることは、試合しかなかった。以前は先走って「ベルトが泣いてる」と言われたが、過去(白川戦)を引きずったまま今の対戦相手の前に立つのも、時間の前後が異なるだけで同じことだった。

 エディオンアリーナ大阪でのKAIRI戦は30分時間切れ引き分け。「ドローではあったけど、この私が白いベルトの絶対王者だ」と言う上谷に、“海賊王女”は「ベルト、泣いてはないかもね」と言葉をかけた。

 その後も防衛回数は増え続け、最終的には15回。歴代最多記録も更新した。しかし試合の最後を飾るのは、フェニックス・スプラッシュではなくファイヤーバード・スプラッシュになっていた。

【次ページ】 ベルトを失っても…横浜アリーナで蘇った不死鳥

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