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「死んじゃいねえよ」失冠も前向きなジュリア、別格だったモネ、鈴季すずは翌日にデスマッチ…スターダム“横アリで敗れた女たち”のこれから
posted2023/04/26 17:01
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
ジュリアvs中野たむの赤いベルト戦(ワールド・オブ・スターダム選手権)――4月23日に横浜アリーナでメインイベントとして行われた2人の試合は、思っていたよりドロドロしたものにはならなかった。
脳天から落とされたジュリアは3カウントを聞いてしまった。立ち上がれないまま目を開けると、横浜アリーナの天井を見上げた。
赤いベルトは中野の手に移っていた。ジュリアは3度目の王座防衛に失敗した。
新王者・中野たむ「ジュリアはバケモンですよ」
「この赤いベルトを手に入れた時、ベルトは守るものじゃない、自分より強いヤツ、自分より面白そうなヤツと戦うためのチケットだって言った。それは本当に心から。あのベルトを持っているからこそ戦える相手、いろんなヤツいるでしょう。やりたいこといっぱいあったんだよ。取られちゃいましたね。でも、私は死んじゃいねえよ。生きているよ。生きているからなんでもできるよ。また出直してよ、取りにいくよ。それだけだよ。また1つやりたいことが、やらなくちゃいけないことが私にはもう1つ増えたってこと。またここから精進したいと思います。短い防衛ロードだったけれど、楽しかったよ」
敗れたジュリアは消耗していたが、意外とさっぱりしているように見えた。そして静かだった。
新王者となった中野の顔は、ジュリアの張り手で腫れていた。
「ジュリアはバケモンですよ。命がどんだけあっても足りない。でも、アイツとの戦いにはこの命をどれだけ捧げてもいいって思っている。この世の中、どんなに頑張っても報われないことが多くて、どんなにもがいても努力しても勝てないヤツが超いっぱいいて。でも、そんな世界でプロレスは奇跡を起こせるんだと思っています。こんな顔めちゃくちゃになってボコボコになって、毎日夢に出てきてノイローゼになりそうで……。もう本当にジュリアの顔なんて見たくないけど、でもアイツがいたから私がいままでこれだけの奇跡を起こせてきたっていうのも事実だと思っている。でもやっぱり、しばらくはゆっくり眠らせて。もう夢に出てこないで」