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“美しい結末”を迎えた上谷沙弥と白いベルトの物語…横浜アリーナで不死鳥が蘇った日「ベルトに生かされていて、本当に幸せだった」
posted2023/04/28 17:02
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
99.9%手中に収めた勝利を100%にすべく、白川未奈は必殺のグラマラスドライバーMINA(垂直落下式リバースDDT)の状態に持ち上げた上谷沙弥の足を4の字に折りたたむと、旋回を始めた。
どよめく横浜アリーナには、同時にどこか安堵に近い予感が立ち込めた。今まで目にしたことのないその技が、この試合を確実に終わらせるためのものであるということは明らかだった。
実際、その新技「フィギュア・フォー・ドライバーMINA」は17分56秒で試合終了のゴングを響かせ、白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)の所有権は上谷から白川へと移ることになった。
美しい形で終わりを迎えた「白いベルトの物語」
旋回している途中で、上谷の姿が見えた。逆さまになった彼女は自身の手をロックし、目を閉じていた。おそらくは限界をとうに超えている中で、直後に間違いなくやってくる未知の衝撃に備えようとしていたのだろう。あるいは、どうなるのかわからないという恐怖に耐えるため、というのも少しあるのかもしれない。横浜アリーナが「これで終わる」という雰囲気に包まれたことも、リング上にはリアルタイムで伝わっていたはずだ。それでも、カウント3を許さない可能性を0.1%でも、0.01%でも残すために、上谷はその姿勢をとっていた。
しっかりと強く、目を閉じて抱きしめる――それは防衛ロードで目にしてきた、上谷が白いベルトを大事そうに抱く姿とも重なった。おそらくそう見えたのは、上谷と白いベルトの物語が、美しい形で終わりを迎えようとしていたからだった。
5,539人の観衆を集めた4月23日の横浜アリーナ大会では、行われた全てのタイトルマッチでベルトが移動した。
アーティスト・オブ・スターダム王座戦は6年ぶりにスターダム参戦を果たした“絶対不屈彼女”安納サオリが鈴季すずを丸め込み、3色のベルトはプロミネンスからREstartへ。ゴッデス・オブ・スターダム王座戦は強すぎる王者組・7Upp(高橋奈七永、優宇)に対し、MIRAIと壮麗亜美が執念のリングアウト勝ち。白いベルト戦で白川が念願の初戴冠を果たし、セミではIWGP女子王座がメルセデス・モネから岩谷麻優へ移動し、メインの赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)戦では中野たむがジュリアを下した。