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“美しい結末”を迎えた上谷沙弥と白いベルトの物語…横浜アリーナで不死鳥が蘇った日「ベルトに生かされていて、本当に幸せだった」 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2023/04/28 17:02

“美しい結末”を迎えた上谷沙弥と白いベルトの物語…横浜アリーナで不死鳥が蘇った日「ベルトに生かされていて、本当に幸せだった」<Number Web> photograph by Masashi Hara

4月23日、スターダムの横浜アリーナ大会で入場する上谷沙弥。白川未奈に敗れ、1年4カ月にわたって防衛し続けた白いベルトをついに手放した

 きれいにベルトと別れることができる王者はごくわずかだ。次々現れる挑戦者によって、大抵の場合、志半ばで奪われてしまう。たとえばこの日、モネは試合後にdisappointed(がっかり)、broken(壊れた)、bankrupt(破産)といった言葉を用いたし、ジュリアは「やりたいこといっぱいあったんだよ」と強い相手と戦うためのチケットを失ったことを嘆いた。

 ところがこの日、これ以上はない綺麗な終わり方を迎えた王者がいた。それが上谷だった。

上谷沙弥は白いベルトを自分色に染めていった

 上谷が白いベルトを獲得したのは2021年12月29日。中野たむをフェニックス・スプラッシュで下した彼女は手に入れたベルトを“全力のベルト”と定義づけ、「このベルトと共にスーパースターに駆け上がっていく」と言ってみせた。

 それから1年以上、白いベルトは上谷のものだった。アイドルのオーディションに落選したアオーレ長岡で、両国国技館では2日連続で、さらに福岡国際センターではフェニックス・スプラッシュ封印も懸けて……。防衛を重ねれば重ねるほど、白いベルトは全力でまっすぐに突き進む上谷の色に染まっていった。

 3度目の防衛戦で林下詩美に「チャンピオンは全力が当たり前なんだ。全力だけじゃダメなんだ。その上をもっともっと行かないとダメなんだ。上谷なら全力以上、もっともっと最高に頑張れるはずだ」と言われた上谷は、ハイペースな防衛ロードを突っ走り続けた。挑戦者の勢いを削ぐことは一切せず、劣勢に立たされても最後は逆転してフェニックス・スプラッシュで勝利。気づけばその試合ぶりは「相手の力を受け止めて勝つ」という理想の王者像に近づき、「白いベルト=上谷沙弥」のイメージはますます強まっていった。

 それが決定的なものになったのは、ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で行われた9度目の防衛戦だ。上谷は、かつて白いベルトの象徴だったWWE帰りのKAIRIとの戦いを意識し過ぎてしまい、先走った。KAIRIは王者に「白いベルトが泣いてるよ」と目の前の相手に全力で向き合えていないことを指摘。“全力のベルト”と共に駆け上がってきた上谷の胸に突き刺さる、クリティカルな言葉だった。

 そんな状況で行われる予定だった両者の対決は大きな注目を集めていたが、試合直前でKAIRIが体調不良によって欠場してしまう。

【次ページ】 「あの日」のフェニックス・スプラッシュ

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