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《独占》“第二の祖国”日本で高祖父の墓参り…競技生活に終止符を打ったキーガン・メッシングの“長年の夢”に協力した筆者が語る秘話 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byTomohisa Konno

posted2023/04/21 17:00

《独占》“第二の祖国”日本で高祖父の墓参り…競技生活に終止符を打ったキーガン・メッシングの“長年の夢”に協力した筆者が語る秘話<Number Web> photograph by Tomohisa Konno

日本での国別対抗戦を終えた翌日、長崎を訪れ先祖のお墓参りをしたキーガン・メッシング

協力した筆者が明かす「日本での墓参り」はいかに実現した?

 今シーズンを最後に引退すること、今季の世界選手権と国別対抗戦が日本で開催されることを考えて、彼がお墓参りに行くとすればおそらく今年が最後のチャンスだろうと思った。引退後は父と同じように地元で消防士になるという。2人の子供の子煩悩な父でもあり、次に来日する機会はいつになるかわからない。

 日本に不案内なキーガンが南島原までたどり着くには案内が不可欠で、メディアとのコラボでやるのが理想的だと思った。だが雑誌では予算的に無理だとわかっていた。スケートの取材で親しくなったテレビのプロデューサー数名に相談したが、「民放ではちょっと……厳しいですね」と、色良い返事はもらえなかった。

 それでもキーガンが、南島原の海辺に立つ万蔵さんのお墓を訪れるイメージが、頭の中から離れなかった。最後にNHKのプロデューサーに声をかけると、スポーツ担当プロデューサーが興味を示したため、キーガンとサリーさんの南島原行きが実現したのである。

「パックソンが亡くなってから、ずっと彼は僕の心の中にいます。だから長崎にも一緒に行くつもりです」と出発前にキーガンは口にした。

 ニューヨーク在住の筆者は今回同行取材ができなかったことは心残りではあるが、送られてきたキーガンとサリーさんの嬉しそうな表情を見て、幸せな気持ちになった。無事に終わった撮影は、5月に放映される予定だという。

引退後は「消防士になるつもり」

 国別対抗戦のリモート取材の最後に、これから一番やりたいことは何かと聞いた。

「うちに帰って、まず子供たちと妻をハグしたい。でも家に帰れるのは1日だけで、それからカナダのアイスショーが7週間始まるんです。ずっと子供たちを世話してくれている妻は、僕のスーパーヒーローです」

 キーガンは、4月の末にハリファックスで開幕する「スターズオンアイス」のカナダツアーにも出場する予定だ。

「人生の新しい章が始まります。週5日リンクに行く必要がなくなるので、スキー、キャンピング、ダートバイクなど、子供たちとやりたいことが沢山ある。いずれは予定通り消防士になるつもりですが、ショーは出られる限り続けたいと思うので、少し先のことになるかもしれないですね」

 キーガンの新たな門出を、万蔵さんもパックソンさんも見守っているに違いない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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