琢朗「さやかは当時、一貫教育の私立学校に通っていて、公立よりお金がかかる。テニスをさせるにもお金がかかる。その両方をやってどちらとも中途半端に終わるより、中学校に上がる前の段階で、どちらかを選びなさい、と言って聞かせたんですよ」

　さやか「ただ、私自身はそこまで事の重大さを理解できてなかったと思います」

娘のために東京に戻ることを決意

　琢朗「実はそのとき、僕も覚悟を決めました。お世話になった広島を離れるしかない、と。彼女が本気でプロを目指すなら、そのためのジュニアのチームに入れて、試合にたくさん出場できる環境を整えなければならない。

　そこで、さやかが中学に進んだ18年、生活の拠点を東京に戻すことにしました。僕自身がカープからヤクルト（スワローズ）に移籍したのも、さやかのためだったんです」

　それが、娘に「覚悟」を求めた琢朗の、父としての「覚悟」だった。そして、父と同時に、母もまた娘をプロにするための「覚悟」を固める。

<つづく>

#2に続く

「お父さんが倒れた」石井琢朗妻はパリから札幌へと向かった…テニスで海外転戦の次女・さやかも感謝する“母の献身” 「あんなタフな母ちゃんはいない」