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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
驚きの発想「東大院に受かったら、箱根を走れるかも」異色の高学歴ランナー・古川大晃と箱根駅伝の夢…博士課程での研究テーマも”ランニング”
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/04/13 11:03
現在は東京大学大学院で研究を続けながら、箱根駅伝を目指している古川大晃
東大近くの飲食店で、餃子定食を食べながら…
実は熊本大3年時に最初に東大との関わりを持っていた。
当時の東大には、のちに箱根ランナーとなる近藤秀一がいた。近藤は同学年で、1浪して大学に入ったという共通点がある。関東学生連合チームで箱根駅伝を目指しながらもなかなか叶えられずにいる近藤がブログやSNS等で発する言葉の数々には深く感銘を受けていた。
“一緒に練習をさせてください”
全く面識がなかったが、思い切ってツイッターで近藤にダイレクトメッセージを送った。
「近藤くんは有名人でしたが、僕のことを知っているわけもなく、たぶん“誰だ、こいつ?”って思ったのでは……。でも、僕のメッセージに真剣に向き合ってくれました」
こうして大学3年の終わりに、東大のグラウンドで練習に参加させてもらった。練習後には、大学の近くの定食屋で餃子定食を食べながら話し込んだ。その後も、近藤にはいろんな質問を投げかけたり、東大の合宿に参加させてもらったりと交流が続いていた。
数年後にまさか自分が東大院に進学するとは、その時は思いもしなかった。
東大院に進んでからは研究中心の生活だが、強豪校の青山学院大の合宿に参加させてもらうなどして、箱根駅伝を目指した。
箱根出場を逃した“2秒”の後悔
そして箱根予選会で好走し、博士1年目から関東学生連合チームに選ばれた。
「1年目は最高の練習ができていたわけではなかった。言い訳になりますけど、博士課程は3年間あるので、2年目、3年目で箱根駅伝に出たいと考えていました。まずは一度、内側から箱根を経験したいと思っていて、実際に連合チームに選ばれて、いろいろ経験できた。次は本気で狙おうと思いました」
1年目はチーム内14番手で出場することが叶わなかったが、古川の想定通りに事は進んでいったと言っていい。
本気で狙った博士2年目のシーズンだったが、箱根予選会は前回よりも順位を落とし100位だった。2年連続で連合チーム入りを果たしたものの、チーム内順位は13番手。メンバー選考は予選会の成績を重視していたため、メンバーにアクシデントが重ならない限り、古川に出番は回ってこなかった。
「本当に悔しかったですね。2年目の予選会は人生の大一番でしたから。
いつもと同じように時計を付けずに走ったのですが、前回は5kmごとにタイマーが置かれていたのに、それがなくて、自分がどのくらいのペースで進んでいるのか全く分からなかった。ガンガン行けばよかったのに、余力を残してレースを進めてしまいました。狙った大会で力を出し切れず、イマイチの結果になってしまって……。もう1回やりたいと思うくらい悔いが残っています」
結果的に、連合チーム12番手の榎本晃大(明治学院大2年)までが本選に出場している。古川と榎本の予選会でのタイム差はわずかに2秒。そのわずかの差で古川は今回も箱根出場を逃した。