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25歳で突然の引退表明…スターダム・ひめかが“プロレスラーではない人生”を望んだ理由「天職かなとも思いました。だからこそ…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/03/31 17:45
25歳の若さでリングを去るスターダムの人気プロレスラー・ひめか。引退を決断した理由や、プロレスへの思いについて話を聞いた
引退発表前の苦しみ「まだ言えないんだ、って…」
昨年8月、KAIRIの体調不良によって、上谷沙弥の持つ白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)への挑戦のチャンスが訪れた。わずか3日前の決定、構える必要はなかった。
「狙っていなかったのに、チャンスが転がり込んできた。だからこそ、いい試合ができたのかもしれません」
プロレスラーとして過ごした5年間のすべてを出せた試合になった。ジュリアが持っていた白いベルトには興味があったが、上谷の白いベルトには興味を示せなかった。だが、上谷の逆指名で実現した白いベルト戦は、まぎれもない好試合になった。ひめかの「ベストバウト」と言ってもよかった。しかしその後は、「燃え尽き症候群」とも言える状態になったという。
赤いベルトも白いベルトも巻くことはできなかったが、ひめかはスターダムの多くのベルトに絡むことができた。
4月23日の横浜アリーナに向けて引退ロードは進んでいる。だからといって、特別な思いは「まったくない」という。
「引退ロードはお客さんが思うこと。私は常に最後の試合だと思ってやっている。この試合で出せるだけのものをすべて出そう、って。終わりが決まっていても、変わらないひめかのままでいたい。試合を見たら、『変わってないな』と感じてもらえると思います」
引退の発表会見は今年2月に行われた。発表が「延びて、延びて、延びて」いった結果、その時期になった。決まっているのに言えないその期間が、ひめかは「つらかった」という。
「苦しかったです。まだ言えないんだ、って……」
だから、ようやく実現した引退発表会見では、晴れやかな顔をしていた。やっとその苦痛から解き放たれたのだ。「顔が明るくなった」とファンから言われた。笑顔が前面に出た会見で、「まったく悔いはない」ということをみんなに伝えたかった。
たしかに「もったいない」という声も多かった。しかし、ひめかは「自分自身はもったいないとは思わない」と胸を張った。