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25歳で突然の引退表明…スターダム・ひめかが“プロレスラーではない人生”を望んだ理由「天職かなとも思いました。だからこそ…」
posted2023/03/31 17:45
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
女子プロレス団体・スターダムのひめかは4月23日、横浜アリーナで舞華と引退試合を行い、5月14日の後楽園ホールでの引退セレモニーでリングを去る。25歳での突然の引退発表は驚きだったが、ひめかの気持ちははっきりしていた。
「引退をやめようなんて、まったく思わないです。一度、自分で決断したら曲げないタイプなので。気持ちが揺らいだりもしない。引退は誰にも相談しないで決めました。舞華にも、ロッシー小川さんにも、原田克彦社長にも相談はしていません。昨年の10月、小川さんに話をしたんですけど、まさかその話だとは思っていなかったみたいで、やっぱり『早い』って。でも、気持ちは固まっていたので、小川さんは『誰も止めることはできない』って言ってくれました。引き止められなくてよかった。それに応えられないので」
「前の日まで元気だった父が…」引退を決めた理由
引退のきっかけは、昨夏に父が突然亡くなったことだった。
「25歳で引退するかどうか決める」というのは、前々から家族と話していたという。昨年4月には朱里が持っていた赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)にも挑戦。戴冠は叶わなかったが、ひめかは「もっと飛躍してできる自信がついた」と手応えを感じていた。
その時点では、ひめかの心はプロレスを続ける方に向かっていた。
だが、7月に父が亡くなった衝撃は、あまりにも大きすぎた。
「前の日まで元気だった父が、次の日には帰らぬ人になってしまった。持病や疾患があったわけではないんです。今日寝ても、明日、自分が生きていられないかもしれない。そう考えると……」
ひめかは悲しみの中で、こう考えていた。
「プロレスラーのひめかだけの人生で終わりたくない」
スターダムの中でやり遂げていないのは、ベルトを巻くことだけだった。
「私はメンタルが弱いので、たぶん、ベルトを持つ器ではないんです。すべてのタイミングが一致したのが今でした。もちろん、ベルトもとって、次にやることが見つかっていたら、なおいいんでしょうけど……」