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顔面直撃でも血だらけノック続行「普通の子ならすぐ歯医者に」源田壮亮のスゴすぎるド根性っぷり…侍Jを引っ張る“たまらん守備”の原点
text by
前田泰子Yasuko Maeda
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/03/09 06:02
「#源田たまらん」のハッシュタグができるほど多くの人を魅了する源田壮亮の守備力。WBCでは打撃や走塁でも存在感を発揮したい
3年の春、吉野さんは学校を離れ、代わりに赴任してきたのが渡辺正雄さん(50歳、現・佐伯鶴城高校 野球部監督)。後に森下暢仁(広島)、川瀬晃(ソフトバンク)ら数々のプロ野球選手を育てた渡辺さんは当時コーチとして源田を指導した。この出会いがプロへ続く道を開いたと言える。
ちょうどこの頃、源田の身長は20センチ近く伸びていた。渡辺さんは振り返る。
「普通は体が急に大きくなったら自分の体をうまく使えなくなるんですけど、源田はそういうのが全くなかった。守備は全くの自己流だったと思いますが、ものすごくうまかったです」
さらに試合中、渡辺さんを驚かせたことがあった。源田は守備につくとショートの定位置にはおらず、捕手の構えに合わせて打球の方向を予測し、1球ごとに守備位置を変えていた。
「高校生だから投手のコントロールもそんなに良くない。予測と反対方向に打球が来ることもあるんです。定位置ならある程度追いつけるんですが、源田は逆を突かれてもまた同じように守備位置を変えるんです。こだわりというか、守備に関しては試合でも自分のやりたいことを試しているような、そんな風に見えました」
「まだ僕、違うんです」プロを断り大学へ
3年夏、大分大会準々決勝で日田林工に敗れて源田の高校野球は終わった。渡辺さんのもとにはスカウトから指名の話があり、源田が望めば高卒でプロに進めたはずだった。もしプロ入りが実現すれば、同校から巨人入りした岡崎郁以来となる快挙。渡辺さんその事実を源田に告げると、意外な答えが返ってきた。
「まだ僕、違うんです。今じゃないんです。プロに行くのは」
あっさりプロ入りを断り、大学進学を希望した。
「愛知学院大へお願いしてとってもらえることになったと源田に言ったら、アッサリ、はい、そこに行きますと」
即決だった。
渡辺さんは源田がここまでの選手になれたのは、その決断力があったからではないかと話す。
「大学を卒業するときもプロから話があったのに、トヨタ自動車に決めて『2年後にプロに行きます』ってペロッと言える。決断力と勇気と前進する力はすごいですね」