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星野源もラジオで「踊りたくなった」と絶賛…“1億回再生の大バズりダンサー”THE D SoraKi(19歳)はなぜ人を魅了できるのか? 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/02/24 17:00

星野源もラジオで「踊りたくなった」と絶賛…“1億回再生の大バズりダンサー”THE D SoraKi(19歳)はなぜ人を魅了できるのか?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

「Redbull Dance Your Style 2022 World Final」で優勝し、世界王者となったTHE D SoraKi。オファー殺到中の19歳の素顔に迫った

 特徴的なイントロのドラムに合わせてSoraKiが踊り始めた。

 スネアやタムと同調した動きに沸き上がる大歓声。音と合っているのに不思議と“合わせて“いるようには見えず、もっと自由で本能的な動き。口の中に入れるとパチパチと弾けるお菓子があったが、SoraKiの体の中で音の粒が弾け、そのエネルギーが手足を突き動かしているようだった。

 ぽかんと口を開けたり、叫声をあげたり、会場にいた人々のリアクションはそれぞれ。驚きが熱に変わり、グルーヴが渦巻いていく。最後は誰もが釘付けになっていた。

「準決勝のあの時はどんなことを思ってたかなあ。何も考えてなかったと思いますね。めっちゃ無心というか、ウェーイ!みたいな感じだと思います。

 音に合わせていっちゃうと、やっちゃってる感が出過ぎちゃうんですよ。ダンサーだったら『あいつ、ハメに行ってるな』って感じるし、個人的には『うわー、イタいな』と思っちゃいますね。だから自然な流れでハメていくのが、見てても、踊っていても気持ちいいんです」

 すべてが即興。音楽と完全にひとつになって踊るダンサーの姿がそこにあった。

 決勝の3日前、SoraKiはこの曲を偶然聴いていた。会場内にジュークボックスが置いてあり、ダイアナ・ロスは何が入っているんだろうと探してみると『I‘m Coming Out』だけが入っていた。

「でも後攻だったらめっちゃ踊りづらい曲だと思います。バトルはギャンブル的な部分もあるので、フェアじゃないところもまた難しいんですよ」

 今大会で唯一先攻だったのがこの準決勝だった。運命に導かれたとしか思えない状況で、SoraKiは会心のダンスを見せた。

「かませれば絶対に人生が変わる」

 ただ、その踊りが大会後に信じられないほどの反響を巻き起こすとは、この時はもちろん知らない。人生で一番のダンスができたとか、そんな特別な感慨もなかったという。

 分かっていたのは、次の決勝までは休憩が4分しかないということだった。観ている方はただうっとりしていればいいが、踊る方はそうはいかない。

「みんなから『ヤバかったよ!』と言ってもらえて、ああ嬉しいなとは思ってました。でも、この流れで決勝で負けたら最悪だなとも思ってました(笑)」

 息を整えながら必死に集中力を高めた。

「これまで日本人で優勝した人はいなかったから、このバトルで勝てたら人生変わるかなって思ってました。大会の直前にリリースされたCholie Jo(ラッパーのCHOUJIとトラックメイカーのオリーブオイルによるユニット)の『kamasereba』という曲を聴いていたんですよ。その中で“要は肝心な時にかませれば、あの日あの時の場面だったかもな“みたいなことを言ってて、いやあ間違いない、今だな、かまさないと!と思っていました。どのバトルでもかませれば絶対に人生は変わる。だから決勝の前も優勝以外ないっしょって考えて臨んだんです」

 決勝戦は延長ラウンドまでもつれ込む際どい戦いになった。体力的には限界に近かったが、必死に体を動かして踊り切った。へたり込んで大きく肩で息をしながら待った最後の判定、勝ったのはSoraKiだった。

 試合後、一緒に出場していた師匠のYOSHIEにはこう言われたという。

「準決勝が終わってからはお客さんは完全にSoraKiの味方だった。もし決勝で少しぐらいスベったとしても絶対に盛り上がると思ってたよ」

 ダイアナ・ロスの曲でかました準決勝でSoraKiは人生を変えたのだ。

【次ページ】 ダイアナ・ロス本人からも反応

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