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星野源もラジオで「踊りたくなった」と絶賛…“1億回再生の大バズりダンサー”THE D SoraKi(19歳)はなぜ人を魅了できるのか?
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/02/24 17:00

「Redbull Dance Your Style 2022 World Final」で優勝し、世界王者となったTHE D SoraKi。オファー殺到中の19歳の素顔に迫った
現地では12月10日のファイナルを前にプレファイナルが行われた。世界各地の予選を勝ち抜いたダンサー60人以上の中から、シード以外で本戦に出られる8人を絞り込むのだ。その様子を見ながら、SoraKiはこの大会の難しさをあらためて感じたという。
「自分もそうですけど、メジャーな曲で踊りまくる機会なんてあまりないんですよ。そのせいで上手いのに空回りしている人もいました。そこで感じたのは、お客さんを意識しすぎるとシラける。じゃあ、自分は相手とめっちゃバトルしよう。来いよ!とかジェスチャーしながら、マジで相手をぶっ飛ばしに行くぐらいの気持ちで行こうと。それがいい感じで回っていって、他のダンサーとは違う雰囲気が出せたんだと思います」
SoraKiのダンスはヒップホップをベースとしたフリースタイル。初戦はアメリカ予選を制した強敵を破り、準々決勝ではデンマークのダンサーを撃破した。ダンスの中に挑発的なジェスチャーも織り込み、巧みに相手を撹乱しながら勝ち上がっていった。
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あらかじめ決めた振付を披露するコンテストやショーケースとは違う。それがSoraKiが手慣れたダンスバトルの流儀だった。
「バトルが平和になりすぎちゃったら、それはスポーツじゃんって思うんです。ストリートダンスであって、ダンスはダンス。スポーツじゃないので」
「勝ったな」準決勝で流れた“特別な一曲”
そして運命の準決勝を迎えた。
SoraKiが先攻。聞き覚えのあるギターのカッティング音が流れてきた。「あ、勝ったな」とSoraKiは思った。
その曲こそが『I'm Coming Out』だった。
「元々はビギー(ノトーリアス・B.I.G)の『Mo Money Mo Problems』って曲が大好きだったんです。その元ネタってことでダイアナ・ロスのも知って、こっちも最高だなあとめっちゃ聴いてました。だから、曲が流れてきた瞬間はすごく嬉しかった」
ただの好きな曲、という以上にSoraKiにとっては思いの詰まった曲でもある。
「自分が……うん、なんて言うんだろうなあ。家庭でいろいろ問題があった時にお母さんやお姉ちゃんと聴いてたから、なんか人生の辛い時に支えてくれた曲だなって思うんです。ダンスはお金がかかるし、反対された時もあれば、そこからお母さんが守ってくれたり……。小4、小5くらいの時ですけど、あの頃は複雑な気持ちをたくさん抱えていました。
バッドボーイレコーズ(ノトーリアス・B.I.Gらが所属したレーベル)が大好きで、ブラックカルチャーの映画もよく見ていたんです。その中にはもっと辛い境遇の人もたくさん出てきて、『みんなヒップホップだなあ』って勇気づけられていました」
そんな彼らを見ながら当時のSoraKi少年はこう腹を決めたという。
「自分の人生もヒップホップだな!と思いながら生きようって」