濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
タイトルマッチは“朱里との作品”だった…新王者・ジュリアはスターダムをどう“引っかき回す”のか? 異例のアピール「全員覚悟しとけよ!」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/01/31 18:28
昨年末の大会でワールド・オブ・スターダム新王者に輝いたジュリア
鈴季すずとの「姉妹喧嘩」は15分では終わらなかった
ユニットを作り、“白いベルト”ワンダー・オブ・スターダムの王者になり、そして赤いベルトを巻く。自分で動き、そのことで切り拓いてきたキャリアだ。チャンスを待つだけでは、今の成功はなかった。
それが分かっているから、チャンピオンとしても貫禄や風格で勝負しようとは思わない。常に攻めの姿勢だ。
年末年始は部屋に飾ったベルトと「にらめっこ」しながら過ごし、1月3日の年明け初戦を迎えた。
「チャンピオンとして何を見せるか。それはジュリアなりのやり方で相手と向き合って、魂と魂をぶつけ合って、すべてをさらけ出すことだと思ってます。リアルなことがやりたい。リアルを届けたい」
チャンピオンとしての決意をさらに強くしたところで、初防衛戦が2月4日の大阪大会に決まった。挑戦の名乗りをあげたのはフリーの鈴季すず。まさに“リアル”な対戦相手だ。すずはアイスリボン時代のすぐ下の後輩。同じ寮の部屋で寝食を共にし、もちろん練習や団体の業務も一緒だった。ジュリアにとっては大げさでなく妹のような存在だった。
ジュリアのアイスリボン移籍に「裏切られた」と感じたすずは、自身もフリーになるとスターダムへ。昨年10月、リーグ戦での愛憎渦巻く“再会”は15分時間切れ引き分けとなった。ジュリアの言う「姉妹喧嘩」は、15分で昇華できるものではなかったのだ。
ジュリアはスターダムをどう変えるのか?
だから、初防衛戦の相手はすずしか考えられなかった。すずからの挑戦表明を受けたジュリアは「自分から指名しようと思ってたくらい」と言う。
「去年、一度シングルをやって、お互い少しスッキリした部分があると思う。次は姉妹喧嘩の続きではないですね。しっかりとレスリングで向き合う試合になると思う」
実は10人のがけも、すずとのタイトルマッチに向けて自分を追い込むという意味があった。1人3分×10、それも相手は若手ばかりではなく、中野たむや葉月といったライバルもいた。それぞれの3分間に意味があり、それを完遂した上でジュリアは初防衛戦に臨む。
「去年はDDMに入ってきた桜井を引っ張ったり、日本語がまだ得意じゃないテクラをバックアップするのも大事でした。そのことで自分も成長できた面がある。でも今は2人とも頼もしくなったし、私は赤のチャンピオン。だから両国で“帰ってきた”と言いました。また突っ走りますよ。かけてます、今年に」
誰と闘いどんな試合をするか、勝つか負けるか。それだけではなく何を言いどんな表情を見せるか、つまりどこまで“さらけ出す”か。他の誰とも違う、ジュリアだからこその“赤の王者”ぶりは、スターダムの風景も変えていくはずだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。