濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
タイトルマッチは“朱里との作品”だった…新王者・ジュリアはスターダムをどう“引っかき回す”のか? 異例のアピール「全員覚悟しとけよ!」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/01/31 18:28
昨年末の大会でワールド・オブ・スターダム新王者に輝いたジュリア
ジュリア異例のアピール「全員覚悟しとけよ!」
スターダム年間表彰が行われた日の大会では、ジュリアはメインイベントに登場している。試合は10人がけ。10人の相手と連続で対戦するというものだ。6人タッグのリーグ戦が開催中のスターダムだが、この日ジュリアは公式戦が組まれていなかった。それならとジュリアから10人がけを申し出ている。普通の試合では「ジュリアの無駄遣い」だと。
チャンピオンだからこそ、自分から動く。攻める。ジュリアはそう考えている。両国でベルトを巻くと、リング上で彼女は言った。
「ジュリアが帰ってきたぞ! スターダムの選手も、それ以外の女子選手も全員覚悟しとけよ! スターダムを、女子プロレス界を、私が引っかき回す」
団体の頂点に立つチャンピオンとしては、異例とも言えるアピールだった。チャンピオンの常套句は「誰が相手でも受けて立つ」だろう。だがジュリアは「全員覚悟しとけ」と言う。トップ選手として団体を「背負う」とか「引っ張る」ではなく「引っかき回す」というのもジュリアならではだ。
電撃移籍、長期欠場…そして新王者へ
後日、インタビューすると「そこは凄く考えたんです」とジュリアは言った。
「やっぱり赤いベルトのチャンピオンは敷居が高い存在というか。風格がなくちゃいけない、いつも堂々としてなきゃいけない。“いけない”なんですよね。それが、みんなが思う赤のチャンピオンの姿。
だけど、そうなろうとしたらジュリアがベルトの色に染まることになるなと。チャンピオンになったからって自分らしくないことはしたくないので。自分には自分の信念があって、それは曲げたくないんです」
ジュリアのレスラー人生は、ただ漠然と頑張ってきたというようなものではない。デビューしたアイスリボンを誰にも相談せずに退団。スターダム電撃移籍を果たす。批判を浴びたが、間違ったことをしたつもりはなかったし、自分なりの筋は通した。アイスリボンをやめて、スターダムで練習生からやり直してもいいという覚悟もあった。
最初は“腫れ物”のような存在だったスターダムで常に激しい闘いを繰り広げ、誰にも物怖じせず、対戦相手への舌鋒はとことん鋭い。それだけに、ストレスやプレッシャーも相当なものだったはずだ。一昨年は首の負傷で長期欠場を経験している。下手をすると選手生命に関わるというレベルだった。
それは激しい闘いの代償であり、本人によるとケアも足りていなかったそうだ。休んで病院に行くくらいなら練習したい。そういうマインドだった。