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八村塁の電撃トレードは“最善の選択”だった? ウィザーズの思惑と八村が抱えたフラストレーション…NBA記者が明かす“つながった一本の線”
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byGetty Images
posted2023/01/24 17:04
ウィザーズからレイカーズへの電撃トレードが発表された八村塁。NBA4年目、環境を変えて再スタートを切る
隔世の感がある。2019年6月、日本人としてはもちろん初めてドラフト1巡目(全体9位)で指名され、その後、しばらく八村は紛れもなく“ワシントンDCのゴールデンチャイルド”だった。アメリカの首都には大変な数の日本メディアが押し寄せ、その一挙一動に大きな注目が集まったのは記憶に新しい。ウィザーズも日本マーケット拡大を目指して尽力。日本語公式サイトをオープンして様々な企画に取り組み、今季開幕前には念願だったジャパンゲームズを実現させるに至った。
しかしーー。時は流れ、ウィザーズ内外での八村の存在感は少しずつ、確実に薄れていった。ルーキー契約の最終年となった今季、開幕前に行った契約延長交渉は不調のまま終了。ワシントンDCでのウィザーズ戦を観戦したファンならご存知の通り、本拠地であるキャピタルワン・アリーナの周囲で八村のバナーやポスターはほとんど見かけなくなった。そんな背景もあって、ウィザーズを定期的に取材するあるメディア関係者はもう1カ月以上も前からこう述べていた。
「ウィザーズはクリスタプス・ポルジンギス、カイル・クーズマを残留させようとしているから、来季以降の塁の残留はないのではないかと思う。だとしたら、シーズン中のトレードは適切な選択肢になる」
電撃トレードの背景
エースのブラッドリー・ビールとの5年2億5100万ドルという超巨額契約をスタートさせたウィザーズから、今季終了後、八村に加え、ポルジンギス(来季は年俸約3600万ドルのプレイヤーオプション)、クーズマ(同1300万ドルのプレイヤーオプション)もFAになる可能性がある。この中でクーズマは来季のオプションを破棄することが濃厚。ウィザーズが現在27歳のスコアラーを残留させようと思えば、4~5年で8000万~1億ドルほどの大型契約が必要とされる。
様々な情報を総合する限り、ウィザーズはクーズマとの再契約を目指す方向のようだ。仮にポルジンギスがオプトイン、クーズマと再契約となれば、ウィザーズはビールと合わせた3人に合計約1億ドルの年俸を費やすことになる。正直、今季20勝26敗と苦しんでいるチームが現在の主力になぜそこまで固執するのか、クーズマをどうしてそれほど高く評価するのかなどは疑問だが、ともあれ、それがウィザーズの方向性だとすれば、八村との再契約は難しいという結論は理解できる。