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八村塁の電撃トレードは“最善の選択”だった? ウィザーズの思惑と八村が抱えたフラストレーション…NBA記者が明かす“つながった一本の線”
posted2023/01/24 17:04
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Getty Images
日本バスケットボールが産んだ最大の逸材がハリウッドのスター軍団に加入――。そんな刺激的なトレードのニュースが23日、全米を駆け巡った。
この日、ロサンゼルス・レイカーズがワシントン・ウィザーズの八村塁をケンドリック・ナン、複数のドラフト2巡目指名権との交換で獲得すると複数の米メディアが報道。同日の午後にはトレードは正式発表され、特に名門チームのレイカーズが絡んだためにNBAの世界では大きな話題となった。今後、八村はレブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビス、ラッセル・ウェストブルックといったスーパースターたちを擁するパワーハウスの一員として再出発を切ることになる。
ノーコメント」で質問をかわしていた八村
電撃的な急展開にも思えるが、ウィザーズと八村の今季の動きを注視してきたファンにとって、トレード話が進むこと自体はもう大きな驚きではなかったはずだ。
「ウィザーズは複数球団と八村のトレードの話し合いを始めている。得点力を必要とする複数のウェスタン・カンファレンスのチームから興味を持たれている」
18日、スクープの多いThe Athleticのシャムズ・シャラニア記者がそうツイートしたことが大きな話題になった。
このトレード話が出て以降、八村が初めてメディアに取り囲まれたのは21日のオーランド・マジック戦後のこと。この日、自己最多タイの30得点を挙げてウィザーズを勝利に導きながら、八村は全体会見の場に出ることを望まなかった。ロッカールームでもなく、ファミリーラウンジ前の通路での即席会見。そこで一部の米メディアから「トレードを望んでいるか」「トレードされると思うか」といったダイレクトな質問も飛び、それらには英語で「わかりません」とはっきりしない答えを返した。
それでも自身の契約について問われた際の八村のこんな言葉は、その心情を分かり易い形で物語っているように思えた。
「僕はバスケットボール選手として望まれる場所にいたい。僕のゲームを好んでもらえるところにいたいんです。すべてのコーチが僕のゲームを好むわけではないのはわかっています。だから僕を信頼し、信じてくれ、自分らしくいられる場所にいたいんです。それが目標です」
最後に「トレードは自身で志願したのか」と問われると、「ノーコメントです」と返答。そこでウィザーズ広報からストップがかかり、日本語での質疑応答のチャンスはなかった。ただ、これらのやりとりを見る限り、当の八村が少なくとも移籍を拒絶しているわけではないことは誰の目にも明白だった。
「今後2週間、ワイルド(波乱万丈)な時間になるな……」
アリーナを去る際、あるウィザーズ関係者がそう述べていたが、実際にこの時点でトレード成立はもう時間の問題のように思えたのである。