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「“クボの疑惑PK”を写真で見ると」「日本代表ユニの少年も」ダービー熱狂のゴラッソ…映像で伝わりきらない“MVP久保建英”の英雄ぶり
posted2023/01/16 17:01
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
「やっとこの瞬間が来た」
いやそんなことすら思い浮かばなかっただろうか。堪能なスペイン語でも、日本語ですら頭の中にはひらめかなかった。ただただ全てから“解放”されていたのかもしれない。
舞台は1月14日、レアル・ソシエダの本拠レアレ・アレーナ。ラ・リーガ第17節、対アスレティッククラブ・ビルバオとのバスクダービーだった。
完璧な股抜きタッチ、正確なニア突き破り
キックオフから37分が経っていた。
久保建英の足元にボールが向かってくる。相対する赤と白のディフェンダーが距離を詰めてくるのも視界に捉えていた。
ファーストタッチでボールを直角、ゴール方向にコントロールするとともに、絶妙なタイミングで相手の股を抜いて攻略した。
次の瞬間、刹那的にそれでいて正確に――スペイン代表でもあるGKウナイ・シモンの位置を把握すると、ツータッチ目で左足を振り抜いた。わずかに弧を描いたシュートは、GKの右手指先を避けるようにニアサイドを突き破った。
チームの好調とは裏腹に、久保は若干のフラストレーションを抱いていただろう。2試合続けて〈アシスト未遂〉が起きていたからだ。
また10月頭に奪ったジローナ戦のゴールを最後に、なかなか明確な結果を残すことができていなかった。勝利に貢献している手応えはあったはずだが、それとともに身体にまとわりつくようなストレスの存在もあったはず。
ネットを揺らしたことを確認すると、左手人差し指を立てるとともに、右腕は自然とユニホームの首元に向かっていった。
そのまま上半身裸になると、CKスポット付近の客席の方に向かい、全てを忘れてファンとともにゴールを祝った――。
実は友好的なバスクダービー
日本代表MF久保が所属するソシエダは、バスク州サンセバスチャンをホームとしている。
対するビルバオも、バスク州ビルバオをホームとし、バスク自治州2大クラブの対戦はスペイン全土でも話題となる。
好調を維持するソシエダは直近3連勝。バルサ、レアル・マドリーに次いで3位に位置している。一方、敵地に乗り込むビルバオは前節終了時点で敗戦数は4。ソシエダのそれと同数ながらも勝利ポイントを稼げず、6ポイント差で7位と離されている。
それでも意地と意地がぶつかりあうダービーだけに、勝負の行方は分からない。
キックオフまで4時間、すでに街の中心部からスタジアムへ歩いて向かう青と白のユニホームをまとった人々の流れがあった。時折、叫び声を上げるのは赤と白のビルバオファンだ。