他の仲間が笑って祝福をしてくれる中、メリノからは〈考えろ〉というようなジェスチャーを示されていた。

　ただマジョルカ時代、ゴール後に客席が高すぎて飛び込めず、ロッカールームの方まで走り去ってしまい何も撮影できなかった時に比べると、ソシエダのスタジアムは、久保には御誂え向きのスタジアムにも思えてくる。

“疑惑のPKシーン”を写真で見てみると

　2点差とする久保のゴールにスタジアムはしばらくお祭り状態が続いたが、ソシエダは前半終了間際に1点を奪われてハーフタイムを迎えた。

　後半開始早々、セルロートが相手との接触で交代を余儀なくされた。負傷交代の彼には気の毒だが、交代要員にオヤルサバルが登場してくると、大きな歓声がスタジアムを包んだ。長期離脱していたキャプテンの人気の高さを改めて感じるシーンだった。

　そしてこの日最大のボルテージとなったのは、このオヤルサバルのPKでのゴールシーン。このPKを獲得したのは久保だった。

　60分、両CBの裏に抜け出した久保をジェライがボックス内で押し倒してしまった。このCBは、決定機阻止との判断もあり、一発レッドでの退場となった。

　やや厳しい裁定にも見えたが――写真で見る限りジェライはボールには触れておらず、やや後ろからのチャージは、PKが妥当か。1点差に迫られた中で、この試合を決定づける久保の働きだった。

　この日のバスクダービーは、最多入場者数記録となる38342人が見つめた。そのMVPとなったのは、久保だった。1つのゴラッソとPKを獲得したシーンだけでなく、GKを慌てさせるプレスなど守備面での貢献も光った。

　交代時には、スタンディングオベーションで祝福された。

　伝統あるバスクダービーで日本人がMVPを取る。なかなか想像もできなかったことだが――この1試合の結果だけで、今後全てが許されるということはないだろう。久保は一戦一戦こつこつと数字を重ねていくことが求められている。

　またビルバオ側から見ると久保による“疑惑のPK”によって試合を奪われたと感じているだろう。敵地サンマメスに乗り込んでのダービーが今から楽しみだ。

美食の街サンセバの「スペイン風オムレツ」

　サンセバスチャンの撮影後記を少しだけ。

　前回の記事に引き続き、スペイン風オムレツことトルティージャについても、写真で。

　前回は、伝統的なポテトが入ったものを紹介したが、今回のものはバカラオのトルティージャ。スペインで一般的に食べられるバカラオとは塩ダラのことで、バスクで有名なシードラ（リンゴの発泡酒）などによく合わせられる。

　サンセバスチャン滞在時に行きつけになりつつある、生ハムなどが吊るされた雰囲気のあるバルで試合前の一杯も。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。