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「“クボの疑惑PK”を写真で見ると」「日本代表ユニの少年も」ダービー熱狂のゴラッソ…映像で伝わりきらない“MVP久保建英”の英雄ぶり
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/01/16 17:01
自身が得たPKを決めたオヤルサバルとともに喜ぶ久保建英。バスクダービーでの大活躍は、ソシエダでの彼の地位をさらに高めるはず
キックオフまで1時間ほどになると、スタジアムにつながる車道を埋めてビルバオサポーターの一団がやってきた。
発煙筒を焚き、また通行を妨げられている一般車両からのクラクションが響き渡る。スタジアム周りでは特設ステージが作られて、ミニコンサートが行われている。いつも以上の人出なのは間違いがない。
ただダービーの中でも、バスク人という民族的なつながりがあることもあり、友好的なダービーとも謳われる。スタジアム内にはそれぞれソシエダとビルバオのユニホームをまとって、一緒に観戦に来ているファンも多く目についた。
「Kubo」の声かけ、日本代表ユニを掲げる少年も
また久保の活躍の影響だろう。「Kubo」や「Take」と声をかけられることも多くなってきた。日本代表のユニを掲げてポーズをとる少年グループもいた。
両チームの先発が発表される。ソシエダは、現時点でのフルメンバーでこの試合に臨んでいるのが分かる。
シルバを筆頭とする4枚の中盤は、リーガ屈指の盤石ぶりだ。
久保も、セルロートに並びツートップの一角として名を連ねる。個人的な好みになるが、ビルバオの先発メンバーにムニアインがいないことは、このダービーにおける残念な点だった。
両チームが大歓声の中で入場してくる。そして選手たちが見つめる中、伝統的なバスク舞踊が披露され、この試合が特別な一戦だということが強調される。
特徴的なのは、両腕を天に向かって広げたような状態で軽やかなリズムに乗ってステップが繰り広げられるところだ。今でも結婚式や祝いの場で披露されている。
キックオフと同時に強度の激しい肉体と肉体をぶつけあう展開が繰り広げられた。
開始から1分半を待たずに、セルロートとのワンツーで抜け出そうとした久保が、ダニ ・ガルシア、ユリ・ベルチチェとの競り合いで押し倒された。また久保が前線へ通そうとしたスルーパスも、2人のDFが身を挺して跳ね返していた。
試合が動いたのは25分、スビメンディが中盤の底から飛び出した攻撃からの一環だった。一度は跳ね返されたボールだったが、再びソシエダがゴール前のセルロートにつなぐと、2人に囲まれながらも冷静にボールをコントロールし、シュートをねじ込み先制した。
ユニ脱いで警告→同僚は〈考えろ〉ジェスチャー
そして冒頭にも記した、37分のシーンである。
ダビド・シルバが中盤でボールを奪うと、久保へスルーパス。久保は冷静に追加点を奪うと、喜びを爆発させた。
仲間たちにモミクチャにされる中、シルバを見つけると飛びつき抱擁しあった。
ユニホームを脱いだことによってイエローカードをもらった久保は、試合後インタビューで“それ以降守備の強度を下げざるを得なかった”と語ったように、改善の余地のある行動だったか。