佐藤監督は、吉川にさらに大きな伸びしろを感じている。

「論理的に教えればすぐにできる吸収力がありますし、3年間のベストピッチは2年春の浦和学院戦だったように、強い相手ほど向かっていける。体はまだ全然できていませんが、体ができて股関節に力を溜めながら、体を振らないでパッと腕が出てくるようになったら150キロくらい放るんじゃないかなと思っています。ドラフト指名後も良い意味で全然変わっていませんね。トレーニングを黙々とやっていますし、授業もしっかり受けて、先日受けた英検も合格したようです」

「パイの実」をアピールするドラ1・菊地吏玖らロッテ新入団選手。吉川は後列左から2番目　©︎Sankei Shimbun

　同校初のプロ野球選手が誕生したことで、周囲に変化が表れている。

「大学やプロの関係者にたくさん来ていただいたおかげで選手たちの意識も変わりました。2年生以下にも“プロに行きたいです”という選手が出てきました」（佐藤監督）

「周りから注目されるようになった実感があるので、自分たちももっと上に行かないといけないと思っています」（水口拓人副将）

　3年前、すでに浦和麗明が強豪校だったら、野球に自信がなかった吉川は進学しなかっただろう。実績が皆無同士だったからこその運命的な出会い。両者の強い意志や工夫に導かれ、それぞれ新たなステージへ踏み出すこととなった。

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