濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「孤独も感じました」KAIRIの言葉に号泣、白川戦の批判…それでもスターダム白の王者・上谷沙弥はここまで頼もしくなった「歴史に名前を刻みたい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/01/07 17:00
12月29日の梅咲遥戦に勝利し、12回目の防衛を果たした上谷沙弥
もちろん、ファイヤーバードをかわしたのは梅咲の作戦だ。直後、隙を突いた丸め込み。ここが最大の勝負どころだった。これをカウント2で返した上谷は、フランケンシュタイナーで挑戦者を振り切った。こちらも一瞬の切り返しだ。ファイヤーバードをかわされても、動揺して大崩れすることなく立て直しての勝利。今の上谷だから、それができたのだろう。
「自分の中で、いつどんな展開になってもいいように“引き出し”は用意してるので。今日はそれが出ました」
チャンピオンの貫禄さえ感じられる言葉だ。自分と挑戦者の違いについては、こんなふうに説明した。
「梅咲選手はディアナのトップ戦線で、いろんな場数を踏んできてますよね。それは試合の中で感じました。ただ、スターダムのシングルのベルトは“自分がスターダムのトップになる”、“絶対ここでのし上がる”という強い気持ちがないと獲れないんです」
“たった1年”で、上谷は頼もしくなった
梅咲にとって、白いベルトは業界にたくさんある目標の一つなのだろうと上谷は感じた。しかし自分にはスターダムしかないし、白いベルトしかない。
「プロレス、特に女子プロレスって“はかなさ”があると思うんです。いつ何が起きるか分からない。いつまでできるか分からない。そんなところも魅力な気がします。その中で、私はプロレス人生を白いベルトに捧げている。その部分では1ミリも負けてない。だから防衛できた」
新しい目標など何も思いつかない。とにかく白いベルトを守って、そのことでより高みに行きたい。上谷はそれだけを考えてきた。その結果が防衛12回。次のタイトルマッチで勝てば歴代防衛タイ記録に並ぶ。新記録も見えてきた。
「もちろんそこは意識します。プロレス人生を捧げたベルトですから。その歴史に私の名前を刻み込みたい」
復帰した白川のコンディションが万全になったところでリマッチをしたいとアピール。その前に1.8名古屋大会でのV13戦がある。チャレンジャーには壮麗亜美を指名した。
「後輩とのタイトルマッチは初めて。そういう意味で問われる試合、試練ですね。私も先輩と闘ってたくさんの刺激を受けてきた。壮麗にもそれを味わってほしい。壮麗はデビュー3年目。怖い者なしの時期でしょうし、失敗しても許されるキャリアじゃないですか。その勢いを私にぶつけてほしい。受け止めた上で勝ちます」
山あり谷あり。この1年、上谷が泣いている姿を何度も見た気がするが、2022年の最後に触れたのは堂々たるチャンピオンとしての試合であり言葉だった。たった1年で、プロレスラーはここまで頼もしくなるのだ。
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