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井岡一翔の統一戦“ドロー判定”は妥当だったのか?「勝ったと思った」フランコも不満は述べず…どちらも評価できる“難しい採点”を検証
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/01/02 11:05
井岡一翔はWBA・WBO世界スーパーフライ級王座統一戦でジョシュア・フランコと対戦。ドロー判定で互いにベルトを防衛する結果となった
スコアを知らなかったとはいえ、豊富なキャリアを持つ井岡はまったく慌てなかった。「勝っている」という手応えを得ていたと同時に、後半は必ず自分に流れがくる、という自信があったからだ。派手さはなくても正確なヒットで相手を削り、後半に引き離す、あるいはストップまで持っていく。熟練王者は前半に苦戦を強いられても、今まで何度もそうやって勝利を手にしてきた。必ずフランコは落ちてくるだろう。そんな読みがあった。
思惑通り、後半に入るとフランコのペースがやや落ちてきた。井岡の表現を借りれば「崩れてきた」。序盤から打ち続けていた左ボディ、後半から決まり始めた右カウンターが効き始めたのだ。割れがちだった3ジャッジは8、9、10ラウンドとそろって井岡にポイントを与える。ここからさらに突き放せれば、スコア上も、見ているファンの印象の上でも、井岡は勝者となるはずだった。
フランコはドロー判定に不満を述べず
ところが終盤、WBA王者はペースダウンするどころか、再びギアを上げて旺盛な手数と闘争心でWBO王者に迫った。「もっと止まると思った。鈍ると思った」と井岡も舌を巻いたフランコの攻勢だ。井岡は打ち合ってフランコを止めようとしたが、11、12ラウンドのスコアは再び割れる。結果はジャッジ1人が115-113でフランコ、残り2人が114-114となった。
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やはり終盤、特にラストの2ラウンドが井岡にとっても誤算だったようだ。「もしもう一度対戦するなら」と問われると、「もっと自分が攻めきること。自分が前に出てプレッシャーをかける、下がらせる展開に持っていかないといけない」と説明した。
試合後のフランコは「私が勝ったと思った」と口にしながら、「ジャッジの採点はリスペクトしたい」と冷静だった。日本で判定負けした外国人選手が「ホームタウンデシジョンにやられた」とばかりに不満たらたらというケースはよくあるが、フランコ陣営は紳士的に判定を受け入れていた。フランコもチャンピオンであり、ベルトを守れたというのは大きかったのだろう。