「“絶対不屈彼女”は何があってもリングでは泣かない」

　地元の人々、協力してくれたアイスリボンに長浜プロレス、対戦相手とタッグパートナー。さまざまな「つながり」あっての凱旋だった。“あのオタ”ことファンの存在も忘れるわけにはいかない。入場した安納が浴びた、超がつくほど大量の紙テープはファンが用意して地元の観客にも配った。

「紙テープで目の前が全部真っ白になりましたもん。そこから視界が開けたら、みんなの笑顔が見えて。最高でしたね。私も笑顔になってたと思います」

　客席には家族や親戚、同級生たちが来てくれた。エンディングでは泣くかもしれないなと思ったが、意外に涙は出なかった。

「“絶対不屈彼女”は何があってもリングでは泣かないんです。でも大会が終わって高校の先生に会ったら涙が溢れてきちゃいましたね。仲のいい先生で、でもいっぱい迷惑かけた人なので。おばあちゃんにも初めて試合を見てもらえました。“こんなん見れるの人生で最後やわ”って言ってたみたいですけど、いやいや、まだ元気ですしまたやりますよって」

　やってみたら、もっとやりたくなる。反省点がたくさんあったから、修正もしたい。今回のイベント名は『HAPPY JAM Vol.1』。ということは『Vol.2』もあるわけだ。

「できたら毎年やりたいなって。出身地の大津市でもやりたいし、ゆくゆくは大会場のウカルちゃんアリーナ（滋賀県立体育館）で。恒例にしていけば“今年もやるんだ”、“次は見に行こう”ってなるんじゃないかなって」

広がった、安納の夢

　安納は2020年からフリーとして活動している。さまざまな団体に出場したが、思うようにいかなくて苦しんだ時期もあるという。今回、会場で取材して思ったのは、地元大会が文字通り安納の“ホーム”になりそうだということだ。帰れる場所、ベースになる場所。活動の成果を集約できる場所。

「試合の会場で“おかえり”って言われたのは初めて。大変だったけど、次の日からもう来年の話をしてましたね。どんどん夢が広がるんですよ。とにかく今は日本中、世界中の方たち、そしてもちろん滋賀の方たちにも安納サオリを知ってほしい。そして“安納の知り合いなんやで”とか“最初の凱旋大会も見たで”って自慢してほしいです。

　そのためにも、もっともっとレベルを上げないと。試合内容も見た目も知名度も全部。活動の幅も広げようかなと。もうね、変装しないと街歩けないくらいになりたいです」

　これまで、滋賀は仕事を忘れてホッとする場所だった。でも今では、もっと大きくなるための力をもらえる場所になった。安納サオリのプロレス人生は、ここからさらに色鮮やかなものになる。

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