きっかけは一本の電話だ。高校時代にダンスチームを組んでいた桑名菜奈さんから、ダンスとプロレスのコラボイベントができないかと相談された。桑名さんはダンスのインストラクターで、これまでにも地元でダンスのイベントを開催してきた。ここで新たな試みとして、プロレスラーになった同級生に声をかけたというわけだ。その時の心境を、安納はこう振り返っている。

「地元でやるのは引退試合と思っていたので、ちょっとだけためらいました。でも私、少しでも休みができたら帰るくらい地元が大好きなのに、これまで何もできてなかったんですよ。プロレスラーだってこともあまり知られてないし」

　それなら今やろう。気持ちを固めると、タイトル防衛にも新たなモチベーションが加わった。ベルトを持って地元に帰る。滋賀の人たちにベルトを見せる。安納は3度の防衛に成功し、それを実現させた。

安納自身もリング設営など準備に加わった

テーマは「みんなに笑顔で帰ってもらうこと」

　頻繁には帰郷できない安納に代わり、会場近辺の商店にポスターを貼ってもらうなどの宣伝活動はご当地プロレス団体・長浜プロレスが担当。大会でも提供試合を行なっている。

「今回はそういうご縁も大きかったです。凱旋って言うけど、私1人でできた大会ではなかった」

　せっかくのコラボイベントだから、安納はオープニングのダンスパフォーマンスにも加わることになった。だがメンバー全員で練習できたのは2時間ほど。家で、あるいは深夜にスタジオを借りて1人で練習を重ねた。イベント運営に関してのテーマは「みんなに笑顔で帰ってもらうこと」。大会の準備を進める中で「自分は完璧にやりたい人間なんだって気づきました。細かいところまできっちり準備したいんですよ」と安納。ツイッターでは、遠方からの観客に向けての案内も。

オープニングのダンスには安納も参加

「帰りの時間は駅までのバスがないですとか、会場は土足禁止なのでスリッパがあるといいですよとか（笑）。そういうところまでお知らせして。とにかく気持ちよく来て、帰ってほしかったので。遠征してきてくれた人たちが長浜を観光してくれたり、そういうのも嬉しかったです」

　運営の細かい詰めは当日になる。もちろん、どれだけ準備しても不測の事態が起こるのがイベントというもの。オープニングダンスからキッズダンスコンテストの審査員、裏方もやって最後は自分の試合と、とにかく走り回った。

「結局、あの日は会場で座る瞬間がほとんどなかった気がします」

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