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安納サオリ「誰よりも目立って、一目惚れさせる」 華やかさの裏で、人気女子プロレスラーが明かした“苦悩と決意”「遠慮なんかしてられない」

posted2022/06/16 11:00

 
安納サオリ「誰よりも目立って、一目惚れさせる」 華やかさの裏で、人気女子プロレスラーが明かした“苦悩と決意”「遠慮なんかしてられない」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

2020年からフリーで活動する安納サオリ。OZ、アイスリボン、センダイガールズに定期参戦している

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 いつになくテンションが上がって、安納サオリにはそれが悔しかった。

 5月20日、新宿FACEで開催された『NOMADS'』でのことだ。チケットは完売。コロナ対応の“間引き”客席でもない。決して大きな会場ではないが、だからこそ熱気が充満していた。まして『NOMADS'』はこの日が初開催。フリーランスサミットと銘打たれ、出場選手はフリーばかりだ(優宇のみ、イギリスの団体に所属し日本ではフリーとして活動)。既存の団体では、中心となるのはやはり所属選手たち。フリーは基本的にその相手、“外敵”といったポジションが多い。

 フリーといってもすべてが自由ではない。だからこそ「フリーの、フリーによる、フリーのための大会」が必要だと実行委員会の面々(夏すみれ、雪妃真矢、高瀬みゆき、山下りな)は考えた。フリーしか出ない大会、フリー同士の対戦はファンにとっても選手にとっても新鮮だった。この大会で久しぶりにプロレス会場に足を運んだというファンもいたのではないか。

 そういう大会で、安納はSAKIと組み、優宇&朱崇花と対戦。『NOMADS'』らしく他の団体での流れ、枠組みを取っ払った顔合わせだ。安納と朱崇花はこれまでタッグを組むことが多かった。この大会の少し前、センダイガールズプロレスリングでは安納&朱崇花が橋本千紘&優宇に勝利。朱崇花が優宇から3カウントを奪っている。

 おそらく、リング上の4人全員にとって刺激のあるマッチメイクだった。タッグを組んでいた同士が闘い、闘っていた相手と組む。安納とSAKIは元アクトレスガールズ所属で、団体の初代シングル王者決定戦でぶつかった。タッグ結成はフリーになって初めてのこと。「やっぱりSAKIさんは凄い安心感がありました」と安納は言う。

「あんなに場外で暴れたのは久しぶりです」

 満員の観客、いつもと違う対戦カードで上がったテンションは、意外な結果を呼び込んだ。両者リングアウトだ。それぞれの持ち味が出る攻防の中で、朱崇花と安納が意地を張り合う。場外でも完全に歯止めが効かない。レフェリーが躊躇なくカウントアウトしたのは、冷静にリング内に戻るのは無理だと感じたからかもしれない。それほど、安納も朱崇花も熱くなっていた。

 信頼するパートナー、朱崇花がこの日だけは敵となった。「この相手になら何をやっても大丈夫」という感覚になってもおかしくはない。身近な存在だからこそ、負けたくないとも思う。しかも背中を預けたのがSAKI。自分は思い切って暴れればいい。安納にとってはそういう試合だ。

「あんなに場外で暴れたのは久しぶりですね。カウントが聞こえないくらい興奮しました。そうなったのも『NOMADS'』の空間のせいですね(笑)」

【次ページ】 観客を“一目惚れ”させる安納の魅力

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