凱旋試合だからこそ、安納は攻められた

　バタバタと駆け抜けた一日、それでも試合では特別な輝きを放った。トトロさつきと組み、反対のコーナーには真白優希と本間多恵がいた。トトロと真白はアイスリボン所属。本間はフリーで、安納とはデビューしたアクトレスガールズの同期（1期生）だ。

　トトロがパワー、真白がコミカルかつ予測不能な動きで沸かせる。明るさのある、賑やかなプロレス。場外乱闘では、首を絞められる安納を子供の観客が助けに入るという場面もあった。普段なら試合中の選手に近寄ることは厳禁。しかしこの時だけは“あり”だった。そういう雰囲気だったのだ。「あの子、親友の子供なんです（笑）」と安納。

場外乱闘では、観客の子供が安納を助けに入る場面も

　しかし試合が進むにつれて、楽しさと激しさの割合が逆転していく。相手チームは安納を集中攻撃。安納の凱旋試合だからこそ安納を攻める。花を持たせるようなところはまったくない。闘いなのだから当然なのではあるが、そうすることで安納に目が行くという面もあるのがプロレスだ。

　とりわけ、本間の関節技は厳しかった。安納によると1週間たっても腕の痛みが消えなかったそうだ。

「やっぱり多恵は凄かったですね。今回、マッチメイクはアイスリボンさんに協力していただいたんですが、多恵を対角（対戦相手）にというのは私からのリクエストでした」

必死で相手に食らいつく“可憐さ”

　安納のキャッチフレーズは“絶対不屈彼女”。相手の攻撃を受け、顔を歪ませフラフラになりながら反撃していく姿が魅力だ。圧倒的に強いのではなく、必死で相手に食らいつくところに、それこそ“可憐さ”が出る。本間の猛攻は、そんな安納の持ち味をこれでもかと引き出した。安納にとって本間は「一番の仲間でありライバル」。この試合でも、敵でありながらパートナーのようでもあった。本間が対戦相手だったから、安納が最大級に光ったのだ。

対角に立った本間と真白は安納を集中攻撃

「地元だからって特別なことはしないです。いつも通りの安納サオリを見せなきゃ意味がない」　

　安納はそうも言っていた。いつも通り激しく、いつも通り攻め込まれることもある。地元でも、単に自分の強いところを見せればいいというわけではなかった。耐えまくった末の逆転が“絶対不屈彼女”の真骨頂。受けまくって、やられまくって、最後に怒涛の反撃を見せる。本間を仕留めたフィニッシュは必殺技ジャーマンスープレックス。それも3発連続だった。

フィニッシュはジャーマンスープレックス3連発

「それくらいしないと多恵には勝てないんです」

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