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「可憐ですねぇ」人気女子レスラー・安納サオリに観客もウットリ…初の凱旋大会に滋賀が沸いた日「“絶対不屈彼女”は泣かないんです」
posted2022/12/31 11:05
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
「可憐ですねぇ……」
思わず、という感じで筆者に話しかけてきたのは地元のカメラマンだ。女子プロレスを撮るのは初めてだという。12月3日、会場は滋賀県の長浜市民体育館。フリーの女子プロレスラーでアイスリボンのシングルベルトを巻く安納サオリが、初の凱旋大会を開催した。
大会ではアイスリボン提供試合も。朝陽vs.石川奈青、星いぶきvs.松下楓歩というマッチメイク。若くて、体も大きくない、言ってみれば“普通の子”に見える女子たちが懸命に闘う。その姿を初めて見るカメラマンの頭に浮かんだのが“可憐”という言葉だった。たとえばアジャコングやブル中野といった“強くて恐い”女子プロレスのイメージとはだいぶ違ったのだろう。
「私の周りの人たちも言ってました。“あんな小柄で可愛い子がプロレスやってるんだ”って」
急に訪れた、凱旋のチャンス
そう振り返る安納こそ“可憐な女子プロレス”の代表選手と言っていい。大会を前に、彼女は「いろんなものをつなげたい」と言っていた。安納サオリという滋賀出身のプロレスラーがいることを地元の人たちに知ってほしいし、自分の存在を通して今のプロレスに触れてほしい。そんな思いもあっての凱旋大会だった。大都市以外では生でプロレスを見る機会も少ないからなおさらだ。
安納は高校卒業後、役者を目指して上京。悪戦苦闘する中でプロレスと出会った。子供の頃からダンスとバレエをやっていて、見られるのが好きだった。プロレスのリングはステージと違い四方から見られるのも新鮮だと感じたそうだ。
地元の知り合いは、安納がプロレスラーになったと聞いてみんな驚いた。といっても、数少ない身内だけが知っていたことだ。デビューから7年、滋賀で試合をする機会はなかった。ここまできたら地元でやるのは最後の最後、引退試合かなという気持ちにもなっていたが、凱旋のチャンスは急に訪れた。