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「突然、心臓が20分間止まって…」世界的クライマー・倉上慶大35歳が死にかけた朝「気づいたら救急車」命かクライミングか…医師とのバトル 

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寺倉力

寺倉力Chikara Terakura

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photograph byMiki Fukano

posted2022/12/31 17:10

「突然、心臓が20分間止まって…」世界的クライマー・倉上慶大35歳が死にかけた朝「気づいたら救急車」命かクライミングか…医師とのバトル<Number Web> photograph by Miki Fukano

プロクライマー倉上慶大。国内の最難ルートを次々に完登するなど、世界のクライミングメディアから注目される。2021年10月に心肺停止を経験、そこから復帰した

――マラ岩西面をトップまで貫いた「Pass it on」ですね。これまで何十年もの間、誰ひとり登れなかった困難な課題がついに陥落したということで、大いに話題になりました。

倉上 3年がかりのトライだったのですが、最終的に登ることができて、僕は一気に解放されました。それで翌日はマウンテンバイクに乗りに行ったのですが、心臓のあたりがギュッとなって、自転車に乗っていられないくらいの痛みを覚えたんです。そのときは意識を失わなかったのですが、それからはちょくちょく胸の痛みが出るようになりました。それが2020年の秋、倒れる1年前です。

――医者には行きましたか。

倉上 しばらくは、だましだまし胸痛と付き合いながら暮らしていたのですが、どんどんひどくなっていったので、病院で受診しました。結果は「狭心症」という診断でした。「ま、気をつけて下さいね。一応、お薬を出しておきますので……」と。普段の僕は不整脈もないんですよ。それがいろんな条件が重なって、翌年の11月に意識を失って倒れた。

「気がついたら救急車のなかだった」

――なにかトリガーになるような行動など覚えはありますか。

倉上 その年は春からケガ続きで、足首、膝靱帯と続けて痛めたんです。それでもプロだからトレーニングしなきゃ、と登っていたのですが、どんどんパフォーマンスも下がっていった。あとからわかったのですが、それらはオーバートレーニング症候群の表れだったんです。それを示す指標が何項目かあり、僕の場合、そのなかの9割が当てはまっていた。実際、倒れる前日までは5日間連続でクライミングしていましたしね。

――倒れた瞬間は覚えていますか。

倉上 倒れる直前までの記憶はあります。そのあと真っ暗になって、気がついたら救急車のなか。目の前に白衣を着た人たちが映画のように立っていて、これはなんの夢だろうって。そのとき、なぜか僕は暴れたそうです。でも、すごく胸が苦しくて、この痛みは現実だと気がついた。そこでもう一度気を失って。次の記憶は病院のなかでした。

 わりと早めに意識が戻ったようで、自分のいる場所がすぐに普通の病室ではないことは理解しました。集中治療室に運ばれていて、ほかに患者さんが5人いたんですけど、どこからどう見てもみなさんの様子が尋常ではない。そんな場所にいると、自分の置かれた状態に気づくわけです。これはちょっとヤバいのかもしれない。クライミングとか言ってる場合じゃないのかなって。

「心臓病の本を看護師さんに借りて、勉強した」

――病状について医師から説明を受けたのはいつですか。

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