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三原舞依の振付師が語る「マイはスイートだけどとても強い」 闘病から復帰まで…GPファイナル制覇の演技に込められた思い《独占インタビュー》 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2022/12/20 17:00

三原舞依の振付師が語る「マイはスイートだけどとても強い」 闘病から復帰まで…GPファイナル制覇の演技に込められた思い《独占インタビュー》<Number Web> photograph by Asami Enomoto

GPファイナルにて初優勝を飾った三原舞依(フリーの演技)

振付師が語る「マイはスイートだけどとても強い」

 トロント在住のデイビッド・ウイルソンが、電話で本誌の独占取材に応じた。

「僕はマイがティーネージャーの頃から、彼女のことを、ずっと見守ってきました。彼女が病気で滑れなくなった時のことも知っています」。ウイルソンは、そう語り始めた。ウイルソンと日本選手との縁は古く、90年代の伊藤みどりにまで遡る。他にも織田信成、羽生結弦をはじめ、数多くの日本人スケーターの振付を手掛けて、安藤美姫が2005/2006年にやはり「戦場のメリークリスマス」で滑ったSPも彼の作品だった。

「もちろん『戦場のメリークリスマス』はこれまで多くのスケーターが使い、映画そのものにも興味深いメッセージ性がこめられています。でも私はそういった背景とは関係なく、純粋にこの音楽を使って、マイに自分の人生を振り返って表現してみようと言ったのです」

 三原の作品は、2017/2018年シーズンからずっと継続して担当してきた。パンデミックの最中はリモートで作業を続け、今季は久しぶりにトロントで振付を行ったのだという。

「これまでマイは、普通の選手だったら諦めていただろうという状況を、乗り越えてきました。彼女はとてもスイートだけれど、とても強い。その彼女のこれまで経験した葛藤と悲しみ、強さ、そして氷の上に戻った時の喜びを表現したらどうかと思ったのです」

細かな動きに込められた“意味”

 音楽がはじまると、三原は腕をあげて天を仰ぐような姿勢を見せ、それから両手を膝に当てる。そこは関節の痛みが苦しかったことを表現しているのだという。後半から音楽に力強いビートが加わるところでは、スピンの最中に片手を上げて何かをつかみとるしぐさをする。そして最後のステップでは再び滑ることができるようになった喜びを、全身を使って表現しているのだそうだ。

 これまでの彼女のスケート人生を象徴するような振付。ウイルソンは、今季が彼女にとってブレークポイントになると予見していたのだろうか。

「いえ、それは誰にもわからないことでした。マイには素晴らしい才能がありながら、これまで惜しいところで4位という悔しい思いを何度もしてきました。だから今シーズン、GP2連勝してファイナルに進出した時は、僕は本当に嬉しかったし、ファイナルで優勝した彼女を見てとても幸せな気持ちになりました」。ウイルソンは、そう言葉を結んだ。

【次ページ】 「全日本を完璧にやってこそのファイナル女王」

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