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フランス×イングランドは「究極の矛」対「究極の弓」…対エムバペのダブルチームは発動されるのか?
posted2022/12/08 13:30
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Getty Images
準々決勝で今大会屈指の好カードが実現した。中世の武器でたとえるなら「究極の矛」対「究極の弓」。12月10日、日本時間で28時キックオフのイングランド対フランスでは、異なるタイプの攻撃の応酬が見られそうだ。
前大会王者・フランスの「究極の矛」は、言うまでもなくキリアン・エムバペである。
フランスリーグで時速44.7kmを記録したという伝説を持ち、爆発的なスプリント力で対峙する守備者を置き去りにできる。
現代のサッカー理論を凌駕するエムバペの爆発力
たとえば決勝トーナメント1回戦の前半11分、左サイドのライン際で後方からパスが来ると、エムバペはトラップせずに一気に急加速。ポーランドの右MFのヤクブ・カミンスキと右SBのマティ・キャッシュを抜き去り、左足でクロスをあげた。ファーサイドでボールを受けたウスマン・デンベレのシュートはDFにブロックされたが、「究極の矛」が守備ブロックを切り裂いた瞬間だった。
ポーランドは4−5−1のブロックを築き、セオリー通りにコンパクトに守っているはずだった。その守備力によってC組を2位で通過したのだ。だが、エムバペには現代サッカーの守備理論は通用しない。
中央のパスコースを閉じるコンパクトな守備陣形の根底にあるのは、「サイドで相手にボールを持たれても危険性は少ない」という考えである。しかしながらすでに書いたようにエムバペの場合、サイドで前向きにボールを持ったらロケットスタートによって高確率でピッチラスト3分の1のエリアに到達できる。
すでに今大会で5ゴールを決めて得点ランキングのトップに立ち、19歳で出場した前大会の4ゴールを上回った。
エムバペが厄介なのは、そういった「足の速さ」による攻撃だけでなく、正確なボールコントロールによってスペースが限られた密集地帯でも仕事をできることだ。