濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「デスマッチ・イズ・マイライフ」妻の急死を乗り越えた“クレイジー・キッド”竹田誠志の決意「蛍光灯やカミソリで傷つけ…でもそれが生きがい」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/12/06 11:00
長期欠場から復帰した竹田誠志
ドリューはダウンした竹田に“蛍光灯の束”を乗せて
勝ったのはドリューだ。ダウンした竹田の体に蛍光灯の束を乗せ、必殺技スワントーン・ボム。カウント2で返されるとすかさずもう一発。その躊躇のなさからも“竹田超え”への意思が伝わってきた。けれど試合後は、喜ぶより先に竹田に「ありがとうございました」と頭を下げた。竹田の背中を追ってここまできた。その竹田がデスマッチに戻ってきてくれた。二重の意味の「ありがとう」だった。竹田はこう返した。
「お前みたいな最高のライバル、いや友だちがいて嬉しいよ。今年はちょっとリタイアしてたけど、まだまだオレは生きる。また今日みたいなスカッとした、世界が揺れるくらいのデスマッチやろうぜ。その時まで“ありがとう”は言わねえ。Fuck you!だ」
竹田誠志とドリュー・パーカーらしいデスマッチをやって、しかしそれはどちらにとっても通過点だった。12月に入ると、ドリューは次期挑戦者に葛西を指名。25日、恒例となっている葛西プロデュース興行『Blood X'mas』での対戦が決まった。両者は初のシングルマッチだ。デスマッチのカリスマを、そのプロデュース興行で倒す。「オイシイでしょ」とドリュー。
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竹田もここからだ。
「正直メチャクチャ悔しいよ。でも、オレにはまだ悔しいって気持ちがあるってことだ。成長できるってことだよ。オレは生きて、生きて、生き続けて死ぬまでデスマッチやっていく。それが娘と嫁さんとの約束だから」
「血と血で会話ができる友だち」
4度目のシングルで初黒星を喫したドリューについては「血と血で会話ができる友だち」だと言った。「世界にこういう仲間ができるのもデスマッチ」だとも。彼らにとって、デスマッチとはあくまで前向きなものだ。「死ぬまでデスマッチをやる」という言葉は物騒かもしれないが、その意味するところは“デスマッチで生き続ける”ということ。闘うことで物語を紡いでいくという点では、通常のプロレスと変わりはない。
葛西は自分がベルトを巻いたら、竹田を挑戦者に指名すると宣言した。それも年明け早々、1月3日の新木場1stRING大会で。会場のキャパシティは後楽園の1/4ほどだろうか。葛西は言った。
「ホンモノの新春初夢カードだろ」
竹田にも異論はない。ドリューは意地でも葛西vs.竹田を阻止したい。血を流すたびに彼らの関係性は濃くなる。竹田誠志はデスマッチの頂点へ、少しずつ歩を進めていく。そうして、デスマッチのドラマは続く。
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