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「歯もなくなって、顎もズレて、超地獄だけど…」スターダム王座戦で負傷…プロレスラー・白川未奈はそれでも“希望のベルト”を追い続ける 

text by

原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2022/11/10 11:02

「歯もなくなって、顎もズレて、超地獄だけど…」スターダム王座戦で負傷…プロレスラー・白川未奈はそれでも“希望のベルト”を追い続ける<Number Web> photograph by Masashi Hara

11月3日、白川未奈は上谷沙弥の持つワンダー・オブ・スターダム王座に挑戦。口腔部と顎を負傷しベルト獲得は叶わなかったが、プロレスラーの矜持を示した

主導権を握り、王者・上谷沙弥を追い詰めたが…

 2021年11月、白川は同じユニットの中野が保持していた白いベルトに挑戦している。そのときは自身を“サイコ化”させ、強襲という形で試合をスタートさせた。いつも以上の自分を引き出そうとしたその行為は、見方を変えれば“強さ”が足りないということでもあった。

 中野に敗れた白川は、試合後にこう語っている。

「自分を変えなきゃ中野たむに勝てないと思ったのか……。そこが弱いな、って」

 それから1年、白いベルトへの執拗なまでのアピールと、さらなる強さを身につけるためのたゆまぬ努力の継続によって、彼女は再びチャンスを手にした。

 迎えた上谷との王座戦。新コスチュームを纏って入場した白川は、別人格ではなく自分自身だった。ロープの上で堂々と観客にアピールをしてみせるその姿は、手に入れた強さに裏打ちされた自信に溢れていた。もちろん、急襲をする必要もなかった。

 ロックアップから始まった試合のスイッチを入れたのは白川だった。重さのあるミドルキックが上谷を弾き飛ばしたのだ。キックのジムには、強くなるために通い始めた。

 そして、『5★STAR GP』の中で急速に磨かれていった膝への一点集中攻撃が猛威を振るった。低空ドロップキック、ニークラッシャー、インディアンデスロック、ドラゴンスクリュー、足4の字固め……。乱発というわけではなく、効果的に、抜群のタイミングで繰り出される足攻めは説得力の塊だった。そこに、相手を駆け上がるような延髄斬りや多種多様なDDTといった得意技を織り交ぜ、試合を王者のペースにすることを許さなかった。

 これまでの全てを繰り出して勝利に肉薄した白川だったが、最後は王者がスクールボーイ・スラム、スター・クラッシャー、2段蹴り、スター・クラッシャー、フェニックス・スプラッシュと一気に畳み掛けて決着となった。

【次ページ】 「歯もなくなって…」号泣しながら語った“希望”

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