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「歯もなくなって、顎もズレて、超地獄だけど…」スターダム王座戦で負傷…プロレスラー・白川未奈はそれでも“希望のベルト”を追い続ける
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/11/10 11:02
11月3日、白川未奈は上谷沙弥の持つワンダー・オブ・スターダム王座に挑戦。口腔部と顎を負傷しベルト獲得は叶わなかったが、プロレスラーの矜持を示した
「2人の時間」が再び動き出す日まで
奇しくもこの日の広島で、タイトルマッチでの負傷で止まっていた時間を動かした選手たちがいる。林下詩美と刀羅ナツコだ。両者は昨年7月に赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)をかけて激突したものの、試合中盤で刀羅が左膝の前十字靭帯を断裂し、レフェリーストップとなってしまった。
2人は15分一本勝負で真正面から力強くぶつかり合い(刀羅はセコンドや凶器も利用しつつ)、相手を上回るべく動き続けた。林下は、刀羅が持ってきた黒い薔薇をくわえ、場外のテーブルへ飛んでみせた。互いに、相手にとって満足に値する選手であろうとしているようにも見えた。全てが、彼女たちの時間を動かすために必要なことのようだった。
「生きて、プロレスを最高に体感して終われて、とても、とても幸せです。でもナツコ、まだまだそんなもんじゃないでしょ。もっともっとやろうよ。また私がブッつぶしてやるよ」(林下)
「満足してるよ。私が見てきた中で、今までの中で一番カッコよかった。そんなヤツに倒されたら本望でしょ。でも人間ってさ、バカじゃん? 今日満足した気持ちとか、私はすぐ忘れちゃう。だから、私を満足させるプロレスしていってほしい……。いや、お互いにしていこう。何度だって目の前に立ってやるからな」(刀羅)
白川と上谷の時間も、再び動き出すときが必ず来るはずだ。全身全霊でぶつかり合って止まった時間は、全身全霊でぶつかり合うことでしか動き出さない。
2人とも、1日でも早くそのときが来ることを願っている。
スターダムのロッシー小川EPは、白川からリマッチの要望があったことをTwitterで明かした。また、11月19日の大阪大会でKAIRIと防衛戦を行うことが決まった上谷は「ここで飛ぶのをやめたら、白川未奈の気持ちも無視することになるし、ファンの人、自分、この白いベルトにも嘘をついてプロレスをすることになる」と決意を語っている。
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