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異例のケガ公表も…平本蓮の“番狂わせ”はなぜ起きた? RIZIN弥益戦で見えた悪童の“とてつもない可能性”「UFC王者になります」
posted2022/11/09 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
「彼の場合、人間としての評価と選手としての評価は別にして話さないといけない」
弥益ドミネーター聡志の言葉に100%同意する。11月6日の『RIZIN LANDMARK 4』ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)大会で、弥益は平本蓮と対戦した。冒頭の言葉は、試合に向けた共同インタビューでのものだ。
平本はK-1のトップ戦線で活躍し、RIZINに参戦すると2020年大晦日にMMAデビューを果たした。目指すは世界の頂、UFCのチャンピオンだと公言する。誰が見ても大物ルーキーだ。
その一方で対戦相手をこき下ろすトラッシュトークもお手のもの。記者会見はもちろんSNSも平本の“主戦場”だ。朝倉未来に対しては本人不在の会見の場で「ディスノート」を読み上げてみせた。
ケガの公表、規定体重変更…異例の試合に
口が悪いからアンチが増える。加えてMMAでの平本は黒星スタート。2戦目にも敗れ逆風は強まる。初白星は今年7月の3戦目だった。そして今回、組まれた相手が弥益。RIZINにも多くの選手を送り出しているDEEPでチャンピオンになっており、キャリアはこれが20戦目。前回は平本がデビュー戦で完敗した萩原京平を腕ひしぎ三角固めでタップさせている。
実績に大きな差のある試合は当然、弥益有利に思えた。しかも平本は足を負傷し、試合ができるかどうかという状態に。そのことがネットの噂になってもいた。大会5日前になって“ケガをしているが試合はする”という異例の会見。併せて規定体重が66kgから70kgに変更になった。体重が落ちないというのは、おそらく満足な練習ができていないことを意味していた。
平本はケガと練習不足で試合に臨むことになった。しかしこれは66kgに減量し、体を作っていた弥益にとっても大アクシデントだ。事前にケガを公表するというのも異例。平本と運営サイドはなんとか試合を成立させたい。弥益からすると「相手はケガをしている」と知らされての試合。本人は気にしないと言っていたが、メンタル面での影響も取りざたされた。
平本への風当たりは一向に弱くならない。同時に、何の遠慮も忖度もない若者に惹かれるファンもいた。自身のアパレルブランドへのオーダーは、今回特に名古屋からのものが多かったそうだ。会場に着て応援に行く、ということだろう。勇気づけられたと平本は言う。
『RIZIN LANDMARK』はケージ大会。そのメインで、平本は成長ぶりを見せつけた。
「ケガとか不安要素が、逆に集中力を高めてくれましたね」