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イチロー「僕がいなかったらできないから」女子高校選抜戦までの怪我とプレッシャーとの“知られざる戦い”…試合後に輝いた“49歳の笑顔”

posted2022/11/08 11:06

 
イチロー「僕がいなかったらできないから」女子高校選抜戦までの怪我とプレッシャーとの“知られざる戦い”…試合後に輝いた“49歳の笑顔”<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

女子高校選抜との試合にて投球するイチローさん

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph by

Naoya Sanuki

 昨年に続く女子高生選抜との戦い。東京ドームの内野スタンドはぎっしり埋まっていた。観衆は1万6272人。その事実を伝えるとイチローさんは実感を込めて言った。

「そうですか……。いやぁ……、考えられないね」

 いつものように自分にできる準備は最大限を尽くした。ただ、今回は「KOBE CHIBEN」の試合としては、初めてチケットを販売し、観客を集めた。しかも、その場は東京ドーム。来年以降へと繋げていくためには集客のノルマがあったのも事実だった。大きく、大きく予想を上回る大観衆。イチローさんは噛み締めるように、集まってくれたファンに対し謝辞を述べた。

「みんなでこれを作ってくれた。この取り組みの意義は……、人の思い、見てくれる人の思いもそこに乗っからないと、これはできないことなので。続けられないことなので。きょうは僕が想像していたよりも表現してくれた、見てくれている人が。そんな思いです」

ひとりで9回完投勝利「もうちょっと頑張りたいねぇ」

 発足当時は野球経験が全くない選手もいた「KOBE CHIBEN」。軟式球を使った19年の「智辯和歌山」の教職員チームとの試合は草野球だった。昨年からは硬式球へと変え、女子高生選抜との戦いとなった。同時に「KOBE CHIBEN」のメンバーも野球経験者が増え、今回は日米通算170勝を誇るイチローさんの盟友、松坂大輔氏も加わった。もう草野球ではない。平均年齢は約47歳のおじさんチームではありながら真剣勝負のガチ野球。イチローさんは3年連続でひとりで9回を投げ抜き1失点完投勝利。直球、ツーシーム、スライダー、スプリットを駆使し、130球を投げ最速は134キロ。毎回の14三振を奪った。

「もうちょっと頑張りたいねぇ」

 現役時代同様に満足感はなかった。来年へ向け、さらなる高みを目指すその姿は、永遠の現役野球選手だった。

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