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イチロー「僕がいなかったらできないから」女子高校選抜戦までの怪我とプレッシャーとの“知られざる戦い”…試合後に輝いた“49歳の笑顔” 

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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photograph byNaoya Sanuki

posted2022/11/08 11:06

イチロー「僕がいなかったらできないから」女子高校選抜戦までの怪我とプレッシャーとの“知られざる戦い”…試合後に輝いた“49歳の笑顔”<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

女子高校選抜との試合にて投球するイチローさん

「まじでへこみました。去年とレベルが違う」

 1失点も真剣に嘆いた。連続イニング無失点は過去2大会で18へと伸びていた。それがいきなり初回に1失点。四球後に128キロの直球を痛烈にはじき返され、右中間突破の適時三塁打とされた。

「いやぁ、ショックでした、あれ。まじでへこみました。去年とレベルが違いますよ。やっぱり3年生のベストなんでしょうね。去年とは全然違いました」

 実は去年の女子高生選抜チームは『ALL JAPAN』が全員集まったわけではなかった。だが、今年は選り抜きの全日本メンバー。126キロの直球を投げた女子高生もいた。

 男子高校生への直接指導は20、21年と続けてきた。指導した智辯和歌山、高松商はもともと強豪校であったが、翌年に甲子園出場を果たす効果もでた。未来の日本野球のために今の自分にできることをする。それがイチローさんの高校生プロジェクト。このオフも男子高生への指導が予定されている。

 そのイチローさんには見据える夢がある。女子高生選抜との試合を女子高生野球の集大成へと育てたい。そんな思いだ。だから、今年はお客さんを集めた上で成功を収めたかった。

イチローが人知れず戦ってきた“プレッシャー”

 実は、イチローさんは1年を通して肩の不調と戦ってきた。昨年12月の「ほっともっとフィールド神戸」で行った試合では147球の完封勝利。だが、生まれて初めて右肩を壊した。

 今年の春キャンプでは打撃投手としてマリナーズの若手になかなかボールを投げられなかった。4月15日の本拠地開幕を飾る始球式にはなんとか間に合わせたが、そこで再び肩を痛めた。一進一退は続き、ようやく全力投球が可能になったのは9月も中旬のことだった。イチローさんは人知れず、現役時代とは違ったプレッシャーと戦い続けていた。

「僕がいなかったら、これはできないことだから。現役時代にケガできないというのも当然そうなんですけど、でもそれって本人に返ってくる。それだけではないけれど、これとは全然違うんですよ。ここに至るまでに僕は絶対にケガができないから。その切迫感というのは、現役当時のそれとはまったく別の種類のものですね」

 戦いと指導を通じ、女子野球の聖地としたいという彼女たちの思いも伝わった。それも嬉しかった。

「彼女たちには、ただイチローと野球をする思い出づくりではまったくないというのがよく伝わってきた。そこも僕が意図していること。僕の思いと重なるのを確認できてすごく良かったですね」

【次ページ】 高校生のように輝いた“49歳の笑顔”

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