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女子フィギュア界の新星・渡辺倫果20歳とは何者か? 趣味はダイオウグソクムシ、コーチが明かす強さの秘密「苦労をしてきている子なので」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/11/02 17:00
スケートカナダ初出場で優勝を果たした新星・渡辺倫果(20歳)
新人とは思えない落ち着き
「すごく落ち着いて滑っているように見えましたが……」と演技後に声をかけると、即座に晴れやかな笑顔を見せて「よくわかりましたね!」と答えた渡辺。
「表彰台にのりたいっていう気持ちが強かったので、体力面での多少の心配もあったんですけれども、後半に行っても感情とか高ぶることなく本当に落ち着いて滑ることができたので。最後のルッツはちょっと危なかったんですけど、それでもちゃんと着氷できたというのは本当に……この大きい大会で見た目ノーミスの演技ができたので、良かったかなと思っています」
記者たちに囲まれた渡辺は、笑顔で汗を軽くぬぐいながらそう語った。
「シニアのグランプリシリーズの前に、世界ジュニアという大きな舞台を経験させていただいたっていうのが、多分今回役に立っていますし、だからこそ今シーズンもまあCS(チャレンジャーシリーズ)で優勝することができましたし、本番に強い弱いにかかわらず、自分の経験をものにするのが大事って自分の中で思っています」
コーチが明かした強さの秘密「苦労をしてきている子なので」
「彼女は僕のところに来る前から色々と苦労をしてきている子なので、強いんだと思います」。そう語る中庭健介コーチは、2021年8月から渡辺の指導をはじめたという。
渡辺は2016年に膝の大きな故障をし、手術を受けた翌年にカナダのバンクーバーに練習拠点を移した。それまで師事していた関徳武コーチに「ごめん、カナダに行くことになった」と言われた時、すぐに「あー、じゃあ私も行きます」と答えたのだという。「本当に1秒もないくらいの、即答だったんですよ」。まだ中学3年のことだった。
家族のサポートもあった。特に渡辺の母親は、気軽に海外にスキー旅行などにも行く活動的なアウトドア派だという。だが不安などはなかったのか。
「意外と物事をそんなに深くは、良くも悪くも考えないので、そういう意味では何とかなる、全然英語喋れなくても何とかなる、生きてさえいれば何とかなるでしょ、みたいな……」と渡辺は笑った。