競馬PRESSBACK NUMBER
「ファンの人が家の中にいたこともあって…」“元祖アイドルジョッキー”小田部雪46歳が振り返る全盛期「先輩騎手からは『実力が伴っていない』と」
posted2022/10/30 17:03
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph by
Takuya Sugiyama/JIJI PRESS
先輩騎手から「実力が伴っていないのに」と言われたことも
――デビュー日は想像以上にマスコミが殺到して恥ずかしかった、ということですが、その後も続く取材を受けるか受けないか、葛藤はありましたか?
小田部 ありました。取材を受けるのはいいんですけど、「騎手としてまだまだです」と思っていても、それとは対照的なコメントを求められるじゃないですか。だから、気分が向かない時には申し訳ないけど取材を受けませんでした。いま思うと、生意気でしたね。
――「小田部雪」像が一人歩きしていたのかもしれませんね。
小田部 関東でも名前がバーッと出ちゃって、先輩騎手から「実力が伴っていないのに」と言われたこともありました。それが悔しくて、「見とけよ! 絶対に実力をつけてやる」と、いいモチベーションになりました。そのうち、ちゃんと勝てるようになり、騎乗数が増えると、「(メディアに出るのも)しょうがないよね。中津競馬のPRになるならいいかな」と思うようになりました。
――通算2754戦196勝。この騎乗数は、当時女性騎手最多勝記録を保持していた吉岡牧子さんに次ぐ多さです。
小田部 騎手が少なかったのもあるかもしれないですけど、当時は男性より1キロ軽い斤量で乗れるルールだったので、逃げ馬に多く乗せていただきました。
「父ちゃんと乗り方がそっくり」と認められる存在に
――重賞も3勝を挙げました。
小田部 重賞初制覇となったアラブ新春賞とガーネット特別を勝ったワシュウタカハルは中津にやってきた時から調教に乗っていたんですけど、「なんだか走りそうだな」と感じていました。まさか一番上のクラスで勝てるなんて思ってもいなかったですけど、最初の頃はすごく大人しかったのが少しずつ元気が出てきて、道中は掛かるようになっていました。